- 作者: リン・カーター,中村融
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/10/25
- メディア: 単行本
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ファンタジーの歴史というのは大上段に被ると話が広がりすぎて収拾がつかない。ヘビに騙されてリンゴ食ってもファンタジーだし「ちこくだー」言うてトーストくわえた女子高生が走ってくるのもファンタジーだ。どちらも現実には存在しません。本書はそういう「人類の創作物はすべてファンタジーです」な暴論では当然無くて、もっと狭義の「剣と魔法」異世界ヒロイックファンタジーの解説書。ああよかった。
とはいえ、原著は1973年といかんせん古い。尚かつ70年代のファンタジー小説というものが<アメリカの>出版界でどーゆー位置づけにあったのかをある程度了承していないといかんだろうなと、思う。どこかしら啓蒙的(?)で著者の価値観はいわゆるハイファンタジー指向にある、ようだ。*1そういう見方もありましたね、ぐらいの気分で読んでいるとなかなか面白かった。「ファンタジー小説は子どもが読むだけのものではないのだ」とまだ声高に言う必要があった時代の産物か。
神話伝承の類から中世のロマンス、ゴシック小説から20世紀の出版事業へと移り変わるファンタジー作品の「系譜」は真面目に面白い研究書であり、またちょうど「指輪物語」が大ブームになった直後のことなので、作品内容やトールキンの執筆行為を称賛する一方で熱狂的すぎるファンあるいは儲に戸惑ってる様子が見てとれ、なんだか一番最初のエヴァブームとオタク第1世代のギャップみたいw「いやそれトールキンが始めたことじゃねえし」みたいなのはどこでもあるんだなwwとか変な共感も出来る。
「空想世界に現実同様の馬や牛が出てくると文句付けるヤツは大勢いるけど、そもそも人間が出てくるのに誰も文句言わないのは何故なんだぜ」みたいなこと*2が書いてあってみんな考えることに進歩ねーなー、とか。
新人作家がみんな訳注で物故と付けられてしまう程にはやはり古い本で、著者の言い分も矢張り古臭く、硬直しているように感じる。それはつまりこの「剣と魔法」小説がそれだけ進歩したってことなんだろうな。
SF業界風に言えば「拡散と浸透」です。
拡散と浸透って素晴らしいですね。