
- 作者: ジェシー・ダグラスケルーシュ,Jessie Douglas Kerruish,野村芳夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/01
- メディア: 文庫
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いわゆるゴースト・ハンターものな英国恐怖小説。この手の話は大抵オッサン的作家によるオッサン的探偵が主人公を張る物だけれど、本作の主人公ルナ・バーテンデールは極めて珍しいことに「美貌の霊能者にして高名な心霊探偵」で、それもそのはず作者も女性なのであった。
旧家に伝わる中世以来の呪いという一種ゴシック的な怪異(真実はそれどころではないのだが)を扱っているのにも係わらず、それらを解明するに四次元や五次元といった単語を用いるのは如何にも1920年代の作品だな、とは思う。そしていささか性差別的な言質を許していただければ、女性作家によるものからかこの種の作品にしては珍しくラブロマンス要素が強い。
以下ネタバレなんで隠します。物語の核心、ラストにまで触れてますんで注意。
「あの一族は吸血鬼だ」という地元に広まる伝承が、これは悪意ある誹謗中傷の類でミスリードを誘うある種のひっかけなんだろーなーとは読んでて思い、事件の推移も当事者達の意識もそれを否定していくのだけれどしかるに真相が「ええ吸血鬼じゃありませんよ?だって狼男だもん。」とゆーのはそれでええのんかい!と軽くツッコミを入れたくなるw
とはいえフランケンシュタインやドラキュラほど明確な典拠をもたない人狼を題材にして、先祖代々の血縁的形質が連結しているのではなく、太古の昔の行為が潜在意識下で記憶として受け継がれている、という展開は面白かった。いわば「遺伝する精神病」みたいなもので、それを後退催眠によるカウンセリングで治療するというのは現代の作家ではさすがに使い難い手法だろうとは思うのだけれど、当代としては多分アリなんだろう。
1920年代の風潮をなんとなく知れる気がして、それは面白かった。20年代的といえば登場人物が第一次世界大戦の戦争後遺症に悩まされているような描写もあり、単純に言って好みだコレww