- 作者: 野尻抱介
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/02
- メディア: 文庫
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「沈黙―」といっても地味なコックが実は無敵の海兵隊員だったりしない宇宙SF(あたりまえだ)。野尻抱介の本を読むのは実に実に久し振りで「ロケットガール」初版刊行時以来だと思う。あれは面白かったなあ、突然アニメ化されたりフィギュアが出たりでビックリしたものだが。
露骨な萌えキャラとか出てこないし全5編の短編集で展開されるエピソードも比較的地味なものです。でもそこにはなにか地に足がついたハードSF的な燃える要素がありありと。更に言うならハードウェア的な要素だけではなく、そこで行動する個々のキャラクター、人間の意志に萌えるのですよ。「人間賛歌」というメッセージ性を含む作品ってこういう物だと思うんだけどなあ。いや他意はないですよ別に。
でっかい凧をひろげて女子大生宇宙を目指す「大風呂敷と蜘蛛の糸」が滅法楽しいのだけれど、時節柄小惑星探査SF小説「轍の先にあるもの」もオススメです。探査機「はやぶさ」も登場しているこの作品、初出は2001年のことか。いまはまたなにか書いているんだろうなーと、しばらくこの人に注目していたい。
それにしても日本の宇宙SFってどこか貧乏くさい空気や雰囲気がありってあー、あくまでも良い意味で、ですよ?ゴージャスに潤沢にナショナリズム第一に宇宙開発やったりせず、いろんな意味でギリギリのところにアイデアやアクションを落とし込んでいくような手腕は、これ日本独特の伝統かなと思うんですよ。野田昌宏だってそうだったし、谷甲州もそうだ。読んでないけど佐藤大輔の宇宙開発SFもそんなんだと聞く。
それは日本の宇宙開発がいろいろとギリギリなことと、何か関係してるんだろうか?実際NASAの宇宙開発だってそれなりにギリギリなんだろうと思うんだけど、例えば「降伏の儀式」でやってたスペースシャトル・アトランティスを核パルス推進宇宙戦闘機に改造なんてシークエンスに悲壮さは感じこそすれあまり貧乏くささは無かったような。いや「降伏の儀式」が宇宙SFかどうかはさておきw
伝統と言えば人類初の火星有人飛行を描いた「片道切符」には映画「さよならジュピター」で描写されて今でも皆を笑わせてくれる無重力○○○の場面があっておー伝統じゃ伝統じゃとニヤけることしきりwもちろん当時より洗練されています。伝統とは発達の積み重ねなので新しいことも発見されるのですww