ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

歴史群像シリーズ「図説 縄張のすべて」

ナワバリといっても犬猫の類ではなくましてやストリートチンピラの話でもなく、日本史上に燦然と輝く軍事建築である城砦についてのお話。「城を見るには縄張を見ろ」と言ってたのはタモリ倶楽部の何かであったか…

城と言えばまず天守、というのは広く一般的な日本人の認識だと思う。自分の場合まず模型が先に立ったりするけど、あれにしたって天守閣のみが立体化されてる例が殆どであって(姫路城は本丸まで有ったかな)、それが普通です。しかしながら見た目の秀麗や観光地としての観点はともかくとして軍事機能の面から言えば城砦建築の中から殊更天守閣だけを取り出してなにか評価を与えることにはそれほど意味が無い。天守閣が戦闘正面に置かれた状況と言うのは最早陥落寸前である。植物系の中から花だけ切り落として愛だ平和だと唱えるぐらいにそれは不毛で、欺瞞でもある。

そんな事を考えながら読み進めた日本の城郭、グランドプランの本。日本の城が文化的・歴史的発展に伴って山城→平山城→平城と変貌していったことはつとに有名で、それは軍事要塞としての機能から政治政庁としての機能に変化していった表れだなどと解説されることが多いけれども、例え平時の統治に向いて建造された平城、例えば名古屋城であっても、その建築プランに於いては十分に当時の――大阪の陣以降の、砲威力が増大した時代の――攻城戦術に対応しているのだと知っていや勉強になります。知らないこと多過ぎです。「城を見るには攻め手の気持ちになれ」とも言われますね。さまざまに工夫を凝らした防衛機構のコンプレックスについてもいろいろ勉強です。狭間は知ってたけど枡形や馬出の機能については恥ずかしながら、初見。関ヶ原以降の時期、旧豊臣方と徳川系列の大名によって異なる築城思想の違いなどもへぇーボタン連打(笑)

同縮尺で見るとやはり江戸城は巨大な要塞で、徳川幕府260年の本拠地であるなぁとか、やっぱ山城はええなぁとか、姫路城の重層防御はすげぇなぁとか、いろいろ思いますが、

津山城カコヨス!もしこれ建築物が全部残ってたら世界遺産登録されてたんじゃないかしら。

などと。