ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

桜庭一樹「荒野」

荒野

荒野

もともとライトノベルのレーベルで中途打ち切りになってた作品を、直木賞受賞のイキオイで版元変えて完結させたんだったか。最近文庫になってるそうで、そちらは三分冊の形になっているようでそれが正しい在り方なのかな。

うん、面白いですよ。なにがどう面白いのか上手く伝えられそうにないのが残念で、古都鎌倉を舞台に思春期を迎えた少女がだんだんと大人へのステップを上がって――とか、まあそんな所だと思うのだが。

本当に面白いのは出てくる男子が悉くダメなひとばかりだというところだと思う。五木寛之を読んで荒野を目指しちゃう少年ってのもなんだかなぁ、よくファミ通文庫でこんな話出したよなあ…

不思議なもので「花咲くいろは」を母親の愛人が出てきた1話Aパートで切っちゃった割にはダメな父親が愛人をとっかえひっかえしている本作は最後まで読めたのは、こりゃやっぱり自分が男だからかな。

新宿中村屋のカレーライスは「恋と革命の味」がするそうで、その観点に於いては固い絆で結ばれた地下組織を作っちゃう男の子のバカバカしさこそ正しいものかも知れないと思う。女子中学生とカレーライスは似ている。無限の可能性に満ち、食べると美味しそうである。そしてあっという間に瓦解する地下組織の末路と最後までそこから抜け出せない名無しの非モテくんの行く末を、我々は愛おしく思うべきなのだろうかは。

まあ、化け物の類か。