- 作者: H.G.ウェルズ,H.G. Wells,中村融
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/09
- メディア: 文庫
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古典中の古典のひとつだけれど、なぜだかいままで読んでなかった。「こんちこれまたエリアル」なんかは読んでたのにね(それは違う方のDr.モローだ!)
ウェルズの作品って、大抵の場合初めはジュブナイルで接して時間を開けてからオリジナルを読むパターンが多いのだけれどDr.モローをジュブナイルで見た記憶が無い。単に接する機会が無かったと思うけれど、児童向けとしては問題がある内容かも知れないな、と思う。
いわゆる漂流文学の体裁を採っていて主人公のエドワード・プレンディックが辿りついた絶海の孤島では狂気の天才科学者モロー博士が改造手術で獣人を創りだしていて…といったおおまかなストーリーはまあ、有名だと思う。なんでもかんでも外科手術でうりゃうりゃしちゃうところは如何にも19世紀的で、ダーウィン主義が社会思想になってるところなんぞはまさしく世紀末のイギリス文学かなー。主人公はあんまり道徳的でない(と言うか、単にワガママに見える)しお話の結末にも特に教訓のある訳じゃなし、古典的価値はともかくジュブナイル的には面白くないだろうなと、そんなことを考えた。
巻末に「ウェルズSF作品邦訳書誌」が掲載されていてこれが労作。昭和8年に翻訳された「発電機大明神」ちょうよみてえ。*1
流石にいろいろ古臭いんだけど、それまでは伝奇伝承の類だった「怪物」を人間が科学の力で創りだすって主題はメアリー・シェリーのオリジナル「フランケンシュタイン」と似てますね。