ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ギャビン・ライアル「深夜プラス1」

深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))

深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))

ギャビン・ライアルを知らない?死んでほしい。

と、日本冒険小説協会会長、内藤陳氏を偲んで再読。何度目だ「深夜プラス1」、ハーヴェイ・ロヴェル好き過ぎだろ俺…

とはいえやっぱり、読み返してみればこれはカントンの物語である。生き残ってしまった人間や時代遅れの道具、1932年型のモーゼル自動拳銃や1930年製ロールスロイス・ファントムII、フェイ将軍やアランとベルナールのような者達の物語である。引用したい台詞や語りは数知れず、菊池光の古風な翻訳文体と相まっての名文揃いなのだけれど、例えばチャンドラーのフィリップ・マーロウのような位置には立てなかったのが「冒険小説」と「ハードボイルド」の違いかなと、思う。冒険小説ってひとが冒険する小説ではないんだよなー。あまりに有名なフェイ将軍の拳銃コレクションについてハーヴェイ・ロヴェルが評するくだり、フェイ将軍の返しの方が重く響くようになったのは自分が歳を取って時代遅れに生き残っちゃったからだろうなあ(藁

しかし現代ではこういう作品はなかなか生まれないでしょうね。携帯電話ひとつとっても、ね…

ところでフランスからスイスを経由してリヒテンシュタインに向かうこのロードノベルの、クライマックスとなるのは「リヒテンシュタインの南端でスイス領が河の向こう岸に及んでいる」スイス軍の要塞地帯だった。なるほどリヒテンシュタイン公国非武装中立国家ですね(棒)