ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

グレアム・グリーン「二十一の短篇」

二十一の短編  ハヤカワepi文庫

二十一の短編 ハヤカワepi文庫

このブログで「純文」とカテゴライズされてる作品は大抵「どのカテゴリに属させればよいかわからない」作品である(笑)。さてグレアム・グリーン当人は自らの著作を「ノヴェル」と「エンターテインメント」のふたつに分類していたそうだが短篇の場合は「ノヴェレット」とか「エンターテインメンテット」とか呼んだりするんだろうか、しないか。

もっとも古いもので1929年、新しいもので1954年という年代の短篇集。ユーモアありサスペンスありで作風いろいろだけれども、共通してどこかドライな、冷めた視線を感じるような印象。お役所仕事を皮肉った風刺作品「働く人たち」や、ふたりの詐欺師が互いをハメようとする内にいつのまにやら当人同士の姪と息子が恋に落ちて以下に二人の親をダマくらかすか…に変調していく「ばかしあい」などユーモアたっぷりの作品を対独戦遂行中の時代に執筆しているのにはある種の感動を受ける。特に後者の方、作品末尾のセンテンスは夢と希望にあふれて――嫌味なプロパガンダの類ではなく、ね――すごく前向きです。

カトリック信仰の目覚めと奇蹟への信心を子供の視点で記述した「説明のヒント」は、ほんのわずかなページ数とボリュームで「宗教」という日本人にはなかなか縁遠いテーマを、実に濃厚に描いた傑作だと思います。

秒速5センチメートル」も宗教かな?いや、違うよなーアレは…