- 作者: 初野 晴
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2011/10/15
- メディア: 単行本
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寓話めいたつくりで実際の事件・犯罪をモチーフにしてるのはいかにも初野晴らしいな、と思う。車椅子の女性の元に介護ロボットの代わりとしてやってきた人語を解する赤毛のサルとの日常生活、のようで舞台となる近未来社会は滅亡の気配が満ち、やがて二人にはそれぞれ重大な秘密があると明らかにされ…
異常気象だの政権交代だの経済不況だの、スピリチュアル教団の終末思想に格差社会だといったある種露骨に現代社会を風刺する空気で書かれているので嫌う向きも多かろうとは思う。作品そのものは断片、掌編の連続みたいな構成で完成されているとは言い難い。ラストもいささか唐突過ぎる物だけれど、う〜ん、なんでしょうね、こういうの好きなんですね自分。
連載中に震災を迎えているんだけれど、そのことがどれだけ影響しているのかはちょっと気になる。放射能こそ出て来ないけれど「計画停電」とか、まあ色々。
ヒロインのシズカが家に引き籠って就いてる生業が死んだ職人が生前に製作した皮革製品の修復・保全作業で、おそらくそれが「ゆっくりと死につづけている」ことが「生きようとしている」ことと同価値だと、そういうテーマなんだろうな。