ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

宮内悠介「盤上の夜」

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

凄いなこれ。「凄みがある」とはこういうことか。読んでいて何かに戦慄する気持ちを抱いたのだけれど、一体何に対して戦慄したのか自分でもよくわからない。囲碁や将棋などの古典的なボードゲームを使ってSFする連作短編集。

個人的には普段からあまりゲームをしない、するにしても電源系のソロプレイで何かに「楽しむ」ことはあっても誰かに「勝つ」ことをあまりやらないひとなので、却って個々の作品で描かれる勝負の光景に引き込まれたのかも知れないな。囲碁や将棋、麻雀などに打ち込んでいる方はどう読まれるのだろう?勧めてみたい気もするけれど、よしといたほうがいいかな…

全六編のなかではチェッカーを扱った「人間の王」が面白かった。ルールを全く知らないゲームだけれど機械と人間のテーマ、ティンズリーとシェーファー双方のキャラクター、インタビュー相手の意外な正体とオチなど、綺麗にまとまっています。

卓上のボードという小さく限られた空間を題材に実に広がりのある話を書いたもので、第1回創元SF短編賞、山田正紀賞そして日本SF大賞受賞も当然か。そんな作品に対してこの感想文は短すぎると思われるかもしれませんが、むしろ長すぎます。はじめのひと言で十分です。