ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

大森望 編「ぼくの、マシン」

ゼロ年代日本SFベスト集成<S>ということで「逃げゆく物語の話」*1と対になるもの。なんでこれまで読まなかったかなーとあらためて目次を見たら半分近くが既読だったからか。神林長平の表題作「ぼくの、マシン」なんて初出以来何度読んだかわからんぞ(笑)それだけ印象に残る傑作を集めていることも、また確かなのですが。

半分近くは既読だったってことは半分近くは未読だったってことでもある。上田早夕合「魚舟・獣舟」はここからどんな長編に展開していくのか気になる作品だったし、円城塔「Yedo」のコミカルさはこれまでこの作者には感じてなかった印象で本作を内包する「Self-Reference ENGINE」が一体どんな内容なのか俄然気になる。既読分では上遠野浩平「鉄仮面をめぐる論議」が初出の徳間デュアル文庫「NOVEL21 少年の時間」がとっくの昔に品切れになってる現在、こういったアンソロジーに収録されているのは貴重だと思われる(だいたいライトノベルの独立短編ってまず再録されることが少ないんじゃあるまいか)

色んなところから色んなアンソロジーが出ている今の日本SF、どれも大抵面白いものです。綺羅星のような作品の中から、読者ひとりひとりのお気に入りをみつけられるような近年の日本SFへの扉、入り口のような存在に、本書もなるといいのかな?

まあ一番印象に残ったのは田中啓文「嘔吐した宇宙飛行士」末尾「著者のことば」での

ところで、ゼロ年代ってなに?

なんだけどなw 看板を掲げることは実に大切でありますが、あまりそれに拘りすぎるのもどうかってことでひとつ。