- 作者: 巽孝之
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2000/05
- メディア: 単行本
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「論争史」というぐらいだから作家や評論家が角材と鉄パイプで殴り合っているような歴史観を(勝手に)思い描いていたけれど、実際に読んでみたら至極真っ当に日本のSF評論を集成したものでした。資料集としては大変貴重なものだと思います。
ただまあ、わからんよな…と思う。結局そのときその時代、リアルタイムを知らないと内容について正しく理解を得られないように思うのです。メインストリームとサブカルチャーは時に対立するものだけれど、いわゆる大手新聞社の社会的地位だって1950年代と現在では相当違っているだろうしなあ。
自分がリアルタイムで見たことがあるのは90年代末の「クズSF論争」ぐらいで、リアルタイムに見ていた当時でさえなんか的外れなことやってるなーとの印象しか受けなかったのだけれど。夏だろうが冬だろうが、一読者としての自分は変わらず楽しんでいたからねえ。
「浸透と拡散」とか「インサイダーSF論」とかは載ってないのね。後者はともかく前者は日本(に、限らずなんだろうけど)のSFにとっては大変重要で、しばしば歪曲されて使われてるんじゃあるまいかと疑念を抱くところでもあるので、最初に提示されたオリジナルを、読んでみたかったんだけどな。
「宇宙の戦士」論争は文庫の巻末に収録されていたのを早くから読んでました。これの収録を決めたのは訳者か編集者か、実に英断だったと思います。自分が記憶する限り「宇宙の戦士」は初めて読んだハヤカワSF文庫で、その時でさえ「なんかガンダムの元ネタらしい」などと言う理由で手に取ったので、ハインラインの政治的にあんまり感心はなかったのですが。
個人的にハインラインはジュブナイルの方が楽しいんだけれど、ハインライン論でこっちの観点ってあまり言われませんねなんででしょうね。
「愛國戦隊大日本」論争なんて5年も掛けてやることなのかなと、巻末の年表を見て真剣に悩んだ。笑っていいこと・・・だよなあ。94〜5年頃か、右翼の街宣車がテレビの戦隊物主題歌を流してたって事例も実際あるんだけれどさ。
SFの人って視野が広いわりに心の狭い人がいるよねーってそれは「SFの人」に限りませんがな。