ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

広瀬正「マイナス・ゼロ」

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

2008年に復刊されたときには「幻の傑作がついに!」みたいな言葉をよく聞いたような気がします。まったく知らない名前だったのでそのときは手に取ることはなかったのですが、なるほどこれは傑作だなあ。日本SF第一世代(って言葉はあまり好きじゃないんだけどね)にこんな骨太なタイムトラベル・タイムパラドックス作品があったとは…

昭和20年5月、空襲の夜から始まる時間旅行の物語は、時間を旅する男の話でいて、実は時間を旅する女の話でもあった。ともすれば閉塞的になりそうなパラドックスを、しかし前向きに展望して見せるのが娘の存在だというのはなんだか良いなあ。永遠の終わりは無限の始まりですね。

昭和初期の風俗が相当に書き込まれていて、それは作者が実際に見聞きしてきただけではなく資料と調査の賜物でもあるらしいのだけれど、ちゃんと予算を掛けてセンスのよい監督を見つけられれば、これはよい映画になりそうな気もする。連続ドラマでも可。

いや、何を今更なこと言ってんだって話はさておき(笑)