ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

乾緑郎「機巧のイヴ」

機巧のイヴ

機巧のイヴ

表題作は以前に創元のアンソロジーで読んでいた*1、ロボット(オートマタ)のいる江戸時代SF。連作短編化された作品を読んでいくと、この世界が実は江戸時代でも何でもない…というのは最初から構想されていたのでしょうね。スチームパンクというかオルタネイティヴヒストリーな話だった。タイトルに冠されている割りには最初の短編を読んだときはさほど印象に残らなかったオートマタの“イヴ”が重要なキャラクターで、ロボットが人間の模造品であるように、オートマタ単体としてのイヴもまた、ある別の存在のレプリカである(そしてオリジナルより高性能である)ところは面白いなあ。
多くのロボットSF、よく出来たロボットSFが、人間とは何か、心とは何なのか、そういうことを問いかけるようなつくりになるのは王道として、クライマックスでは下っ端のサムライがばっさばっさと死んでいくところは「桃太郎侍」とか「長七郎江戸日記」ぐらいの「時代劇の王道」を行く感じでヘンな笑い声もでるw

そんでまあ、コオロギですよ。なるほどジェミニか王道だなと思うわけで、最初の短編からちゃんと伏線張ってあったのですねえと機巧の上手さに舌を巻く。

あと「これは腰掛けではございません!」がね、可愛いのですよ。こういうのは繰り返しが楽しいのであって、「天丼」の王道も押さえているなあ、などと。