「物語」とはあるけれど、「軍用犬」の歴史と現状を記録したもので別段ストーリーがある訳ではない。歴史よりも現状がメインで、世界の軍隊と軍用犬利用の現状を概観したようなものか。古くは紀元前から犬は軍事に用いられ、戦闘・探知・輸送・救助活動など様々な運用が行われてきた(軍隊での愛玩・マスコットというのも重大な任務のひとつである)。21世紀の現代でもそれは変わらず、軍用犬がいかに頼りになり、有能で有益で有力な存在として掛け替えなく、今後もその価値は揺るがずあり続けるだろうと称賛されている。
そんな内容の本ではあるが、本書を読んでまじまじと思うのは、人類は直ちに犬の軍事利用を中止して、殺し合いなどは全部人類だけでやるべきだ。ということだな…
軍用犬の利用度合いも各国によって様々で、中東やアフリカ諸国であまり活用されないことに対して著者は「イラクでは犬は汚れた動物だとみなされている」「アフリカ人が概して犬を信用しない」などと書いているのだけれど、要は犬の軍事利用は欧米を主体とした軍事文化のひとつに過ぎないってことじゃないのかなー。
日本はアジアでも有数に欧米化された国家だけれど、第二次世界大戦後犬の軍事利用については大幅に縮小され、いまでは航空自衛隊の基地警備に少数の警備犬が使われているだけです。本書でもその記述は2行程度。
日本って、いいなあ。
割とマジで。
この本国によって記述レベルがまちまちで、軍隊と警察活動の(軍用犬と警察犬の)境界線の引き方がよく解らないんだけれど、日本の警察犬活動については全く触れられていない。思うに、いまの日本社会で「犬を軍事利用すること」に対する嫌悪感は相当高いのではないだろうか。それこそ「考えたこともない」レベルで。