- 作者: 草野原々,ぼくのりりっくのぼうよみ,柴田勝家,黒石迩守,伏見完,小川哲
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/01/24
- メディア: 文庫
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ふだんあまりネガティブなことは書かないようにしているのだけれど、まあこれまで皆無という訳でも無し、これはダメだった。
先日読んだ「アステロイド・ツリーの彼方へ」*1の編者(大森望)による2015年概況が、「二○一五年の日本SF界をふりかえると、その中心のひとつは、二○○九年に世を去った伊藤計劃だった」からはじまるのに妙な違和感を感じて、その直後に読んだこともあまり良い影響を与えていないように思うのだけれど、SFの中心のひとつは伊藤計劃ではなくて「伊藤計劃で商売をする連中」じゃねーかというのが大体の感想です。
若手作家を売り出すのに死人の名前でラッピングするというのは伊藤計劃的かもしれないけれど、この本伊藤計劃と関係ない話の方が面白くて、巻末にはやけに長いのがあるなと思ったらそれは長編の抜粋だったのでさすがにページを閉じる。こうでもしないと売れないのだったら、いまのSF界は活況でもなんでもないよ。春だの夏だの言っててなんでSFマガジンが隔月刊になってんのよ。
作品自体には罪などないし草野原々「最後にして最初のアイドル」は非常に面白かった。柴田勝家「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」はSFマガジンで既読だったけれど、これも「完全なる真空」のような虚構性の良さがある作品です。でもそれらの作品もそれぞれの著者も早逝した作家とは関係が無いし、収録作品に共通する「テクノロジーが人間をどう変えていくか」「異質な存在との対話/コミュニケーション」のテーマだって伊藤計劃に帰するものではないだろう。
売らなければ商売にならんというのはわかるのだけれど、なんかピントがずれてる気がするんだよな…