ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

瀬名秀明 編著「ロボット・オペラ」

 

ロボット・オペラ

ロボット・オペラ

 

 

もともとゼラズニイの「フロストとベータ」が読みたかったのだけれど、確かにこれは大著ですね。タイトルだけは昔からよく聞いていて、考えてみると瀬名秀明について語られたり何かの媒体に出るとき必ず挙げられている代表作みたいなものか。国内外のロボットテーマ小説を集めたアンソロジーなんだけど、小説以外にロボットに関する様々な「専門家」(それはロボット工学の専門家であったりロボットアニメの専門家であったりする)による解説、更には瀬名秀明本人による、それぞれの作品年代ごとの背景社会やロボット受容について書かれた総説が本書のキモと言えるでしょう。作品の内容も解説も色とりどりで、実にユニークなアンソロジーとなっています。思うに、アシモフ亡き後アシモフの後を継げるような人材は、SF世界のどこにも現れなかったのだろうなとふと。

 

総説でも解説でも繰り返し語られる「鉄腕アトム」をはじめとするロボット漫画が、日本のロボット開発に大きな影響をあるいは「呪縛」を与えていることは、これは疑いようのないところだけれど、本書刊行時点の2004年ならいざしらず、リーマンショック東日本大震災を経験した今現在の日本が、ロボット技術・ロボット工学に於いて何か先進的な地位を得て居るのかと言われれば、それは果たしてどうなんだろうなあと、読後に一抹の寂しさが残ったのはうーむ、やはりもっと早く読むべきだったかなあ。

 

ホンダのアシモが「楽団」を演じているのを見たときに、これは全然実用性の欠片もないんじゃあるまいかと危惧したのはいつだったろう?ルンバをはじめとするロボット掃除機が一般家庭に広く導入されているご時世に、人口知能学会の表紙問題とか討議してたのは、ナンセンスなんだろうな色々…

 

収録作品についてはゼラズニイ「フロストとベータ」がピカイチなんですけれど、ジョン・ウインダムが別名義で発表した「孤独な機械」がしみじみいい話である。エンターテインメントであれ、「人型機械」にこだわらなくても良いんだろうねえ。

 

ところで藤崎慎吾の「コスモノートリス」はロボットSFではなくてポストヒューマンSFではないだろうか?まあいいかそれは…