ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q―自撮りする女たち―」

 

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

シリーズ第7作。前に全10作の構想だと聞いていたのでそろそろ終盤に差し掛かるのかな?例によって過去の未解決事件が現在の新たな事件と交錯する内容なんだけれど、現在に起こる社会福祉事務所のソーシャルワーカー生活保護受給者たちとの間で起こる「殺し合い」が雑なうえに杜撰な犯罪で、むしろその杜撰さ、雑さが却って実感を沸かせるような展開でした。天才的な犯罪計画とか、大きな謎による迷宮入り事件とかじゃないのよ。

過去の事件が未解決のままだったのも単にデンマーク警察の捜査が杜撰だったからで(これもまあ、本シリーズによくあることだね)、社会風刺的な意味合いはやっぱりあるんでしょうね。

それで今回もうひとつの大きな流れは特捜部Qのメンバーであるエキセントリックかわいいローセが、エキセントリックを大幅に飛び越えてスーサイダルなところに行っちまうこと、本シリーズの大きなテーマ「過去の未解決事件」が、実はローセの過去に起きた事故と犯罪に関するものがメインだった…というところです。これまでずっとただのヘタレぽかったゴードン君がんばる。もっとがんばれゴードン君。

社会風刺と同時に「女性キャラクターが酷い目に合う」のもやっぱりシリーズ共通で、ここがダメな人もいるかも知れませんね。それはそうと「自撮りする女たち」というタイトルは、たしかにスマートフォンで自撮りするシーンもあるけれど、むしろ原題の「セルフィ―」は「自分自身」というような意味で…などとあとがきにあります。ええ、それはよく解ります。

 

それでもカールの分かれた妻の母であるところのカーラがスマートフォンを用いて自撮りを試みようとするシーンの凄まじさは強烈である、相変わらずではあるけれど、いやはやとんでもないキャラクターだ…