本国でも昨年編纂されたばかりの全短篇集成本。ヴォネガットの書いたもの(邦訳されたもの)はあらかた読んできたと思うし最近でも河出の短編集を読んだばかりなのに、どうも忘れているものが多いのは困る。「略奪者」に至っては感想を書き残しているのにだ。(いや「よかった」って書いてるだけなんだけどねhttp://abogard.hatenadiary.jp/entry/20081003/1223044212 )本邦初訳もいくつかあって今回は「暴虐の物語」がそうです。元本は一冊の大著で日本ではそれを5分冊で出すというのはいかにも早川書房らしいけれど、さすがに一冊で出すと読むのも買うのも大変だからこれはいいと思います。しかし全体で8つあるセクションを5分割したために「セクション2 女」に分類される作品が2つしか入って無いぞ…
というわけで今冊の8割方は「セクション1 戦争」の作品なんだけれど、やっぱり捕虜の話、ドレスデンでの体験を扱ったものが多いです。このテーマをずっと書き続けて「スローターハウス5」に昇華させたんだなあというのはとてもよくわかる。
編者も訳者も繰り返し述べていることだけれど、やっぱりモラルの人なんでしょうね。どんだけ社会が壊れても、創作の場でモラルを、少なくとも自分が正しいと信じていることを、書き続けた人ではある。