ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

クラーク・アシュトン・スミス「魔術師の帝国《2 ハイパーボリア篇》」

 

魔術師の帝国《2 ハイパーボリア篇》 (ナイトランド叢書)

魔術師の帝国《2 ハイパーボリア篇》 (ナイトランド叢書)

 

 で、続きです。第3集の予定もあるとあとがきには書かれているけれど、いまのところまだ観光はされていないようで。今巻では「ハイパーボリア」「星々の物語」「ポセイドニスと世界の涯」の三部構成に分かれてそれぞれ異なる舞台の作品群…なのだけれど、あんまり違いを感じないのは自分の感受性の問題だろうか?安田均による巻末解説ではC.A.スミス作品の一番の魅力は “何といってもその「異境性」” で、 “彼ほどいくつもの「世界(観)」そのもので“勝負できている”作家は珍しい” とあるのだけれど、ゾシークもハイパーボリアもなんなら火星を舞台にしていても、ラベルが違うだけで異世界らしさにそうそう違いは、まああんまり感じなかったなーというのが、正直なところ。

しかし作品そのものの良さ、面白さはゾシーク篇よりこちらのほうが楽しかった。既読だけれど「七つの呪い」はやはり面白い。が、以前読んだ時 (http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20111212/p1) にはこれはギャグだなと思ったものだけれど、どうも今回読んだ中にもそれでいいのかというか、結末がヘンな話がいくつかあって、一風変わった読後感を真面目狙ってたんではあるまいか…と思わされる。初訳だという「マアル・ドゥエブの迷宮」などは最たるもので、魔術師マアル・ドゥエブに想い人を連れ去られた狩人のティグラーリが彼女の救出に赴くベタなストーリーながら、結局ヒロインは助けられずあっさり返り討ちに遭い、魔術師が「どうもこういうの飽きた(大意)」みたいなことを言って終わるという、それでいいのか。みたいな話だった…

しかしそのマァル・ドゥエブ=サン、続編である「花の乙女たち」では星間宇宙にはね橋をかけて、徒歩で惑星間航行するセンスオブワンダーを魅せてくれるので一筋縄では行かないのである、フムン。

 

そしてやっぱり解説がね、面白いのよ。作品解題やスミスの人となりのみならず、創土社版を刊行した前後の思い出を安田均が語っていて、70年代の「カウンター・カルチャー文化としての幻想文学」みたいな話ですね。真クリにもありましたね (http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20101015/p1) このへんの時代性とか当事者意識は、さすがに直接はわからないんだけれどねー。

 

ガンダルフを大統領に!」と言われた時代に「ランドルフ・カーターを大統領に!」と言った人たちは、さすがに居なかったろうと思うのだけれど。

 

しかし「ガンダルフを大統領に!」と言ったひとたちは、実際どれぐらいの数で居たのだろう?それは聞いたことが無いんだよなーうん。