ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

古処誠二「ビルマに見た夢」

ビルマに見た夢

ビルマに見た夢

  • 作者:古処 誠二
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: 単行本
 

 古処誠二ビルマものというのも随分巻を重ねてきたけれど、本書は珍しくいい話というか「きれいな話」が続く連作短編集。「小説推理」連載の双葉社刊という事情が関係しているのかな?ここから出てる作品は他の版元(角川とか)に比べるとソフトであったりユーモラスであったり、そしておそらくは壮年・初老の男性読者をターゲットにしているのではないかと目される。本書でもっとも際立つキャラクターであるモンネイ少年なんかは、孫を見るような気持ちを読者に持たせる、そういう役割りで配されているのだろう。あくまで推測ですが、確信はあります。

インパール作戦直前の不穏な空気はあり、死者も語られるけれど、あくまで伝聞であって直接の死亡描写は無い。そういう意味でもソフトな話ではある。中津嶋少尉の遺言として伝えられるビルマへの夢が、現実のミャンマーを思えば単なる「夢」に過ぎないという苦さは、それは作品の外側に在るものなのでまあ、読者次第でしょうね。