ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

マイケル・ドズワース・クック「図書室の怪」

 

 四編の奇怪な物語、とサブタイトルにある通り表題作「図書室の怪」「六月二十四日」「グリーンマン」「ゴルゴタの丘」の四作を収録した短編集。とはいえ「図書室の怪」が中編(ノヴェラ)といってよいボリュームで、ページの8割がたは表題作が占める。これほど古式ゆかしいゴースト・ストーリ―を書くひとが現代にまだいるのだなあということに驚かされます。静謐で上品な恐怖を、ある意味朴訥に語るというか。「図書室の怪」はシャーロック・ホームズの「マスグレーブ家の儀式」を思わせるような謎解きで、館の秘密と一族の過去が明らかにされていくなかなか読ませるものでした。原題を「Libraian」といって、普通に訳せば「司書」なのだけれど、図書室を司るもの、図書室に憑りつかれていたもの、それはいったい誰だったのか…。読了後、そんなことをちょっと考える。いい幽霊譚でありました。

その他3本はいずれも小品だけれど、ノスタルジックな視線と過去からの因縁が絡まって抜け出せなくなるような、広義な意味で「呪い」のお話なのだなあと、だいたいそういう印象を受ける。

著者クックはミステリーの研究家が主で本書が初のフィクション作品らしい。いろいろと人となりを知りたいところなんですが、訳者あとがきがいわゆる「あとがきにあらすじをのせるタイプ」のそれなので、大して情報が無い。それはちょっと不満。