ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

国広仙戯・不知火昴斗「UNKNOWN―狂月の女神」

ホラー風味の伝奇ファンタジーというカテゴリーになりましょうか、BOOTHで販売されている私家版を拝読。以前よりpixiv FAN BOXでささやかながら支援させていただいている不知火昴斗さん原案の物語を「リワールド・フロンティア」シリーズ著者、国広仙戯さんの手によって小説化、総ページ数568P、装甲厚28mmの大ボリュームです(装甲って言うな)。

ここのところメンタルはガタガタのフィジカルはボロボロで、なかなか長編小説を読み辛い体調が続いて果たしてこの分厚い本をちゃんと読めるんだろうかとやや慄いたのですが(笑)スピーディーな展開と読みやすい筆致で無事読み終え。

現代よりほんのわずかに時間の進んだ近未来の日本で起きる猟奇殺人事件と暗躍する謎めいた人々、渦中のヒロインは勝気な女性警官。これまでイラストなどで断片的に伺ってきたストーリーと世界観を漸くひとつの物語として接種いたしまして、マンガで言うならジャンプよりは「少年キャプテン」とかそっちのノリだろうみたいな話にようやく得心することに。オーセンティックな「狼男」事件が展開する中で、当初から非常に胡散臭い人物が1人いて、なるほどそっちの謎解きはメインでは無いのだな、ではメインはどこに在るのだろうなと思ったら、

 

タイトルにちゃんと書いてありました。これは女神のお話で、狂った月「の」女神の話であります。

 

高城警部補が好きすぎて困りますw

 

ではUNKNOWN、未知のものとはなんだろう?ホラーで「未知」といえばやっぱり御大ですが、狼男や吸血鬼といった伝統的且つよく知られた怪異の中にあって、人が未だ知り得ぬものとはつまり自分自身とその在り様である。そんな読後感を得ました。ただもうひとつ謎めいてわからないのはロウのキャラクター性か。本文は基本的に三人称で、ヒロインの巴のパートだけは巴の一人称で心情含めて語られるという形式なのですが、初回販売分に付属するボーナストラック小冊子には巴の一人称と鹿角の一人称による2編が掲載されています(鹿角パートのみ不知火昴斗さんの文章となる)。3人いるメインキャラの中で、常に人を食ったような言動*1をするロウだけが、己の内面を語っていないのですね。さてこれはどういう意味合いがあるのだろう?うん、それはきっと続きが出ればわかるんですよきっとそうだ。

 

たま~にやるんですが、本書を読む際に各々のキャラクターに脳内CV当てて読んでました。最近の作品では無く、90年代ぐらいのアニメやその時期の声優諸氏をディレクションしながら読むと楽しかったですな。具体的に誰がどうこうというのは読み手の個人的な特権に属するので、ここでは詳らかにしませんが(笑)

 

そして本文ラストには意外な人物が意外な形で登場して、読者は椅子から転げ落ちそうになるのである。本を読んで椅子から転げ落ちそうになるというのも、それも読み手の特権です( ˘ω˘ )

*1:直接的な意味ではない