日本SF作家クラブと蔦屋書店の主催で先日開催された「SFカーニバル」。それに併せた選書フェア「日本SF作家クラブが選ぶ偏愛SF200とちょっと」で会長が推していた1冊。当日の会場では流石に並んでなかったんだけれど、GWに改装閉店直前の三省堂書店神保町本店に行ってみたら古書市のフロアで見つけたので、例のしおりふくめて入手。フェアにあった会長自身の推薦文によると
土星の衛星上で見つかった古代の遺物、考古学者クリアス・ホワイトディンプルは、規格外な早老の天才ジュニア・バディルを相棒に、人類史を賭けた謎に挑む。スペース・コロニーと地球の熾烈な遺物争奪戦、クリアスの意外な成長とジュニアのキャラ性!! とびっきりのエンターテインメント
となってます。なお同じ人が 「ハヤカワ文庫SF総解説2000」 でも本書解説を担当していて、成程入れ込んでる模様。
一読して、久しぶりにハードSF読んだなあという気持ちになりました。「一読して」などと書いたけど、こっちの脳内ソフトは全然ハードSF向きじゃないのでそこそこ時間はかかった(笑)巻末のハヤカワ文庫SF紹介を見るとラリー・ニーヴンやグレゴリィ・ベンフォード、ディヴィッド・ブリンなどが並んでいる時代の作品なのですね。
スペースコロニ―の大学で教鞭をとる考古学者の主人公が、土星の衛星イアペトゥスで発見された異星人の遺物解析に招聘され、そこから始まる探索行というまあ、巻末解説にもある通り「2001年宇宙の旅」に触発されたタイプの作品で、木星の代わりに土星、四角いモノリスの代わりに六角形の人工物と、わかりやすくズラしてある。そしてそれを残したと思しき異星人はあらゆることに6に拘り、ヘキサーズと呼称される。あらゆることに3に拘ったどこかの異星種族*1のようだw 六角形モチーフなのはおそらくこちらの事象によるものと思われる*2けれど、刊行当時は最先端の知見だったんじゃないかな?そんな感じで先行作品というかクラークの影響が強く感じられるんだけれど、「デッドヒート」とあるようにコロニーと地球との間で異星人遺産の争奪戦が繰り広げられ、そこで描かれるアクションや人物造詣が見どころで、それは本書に白眉なものです。原題は単に"SATUNALIA"(土星宙域?)なんでこれは邦題が良いですね。
「2001年―」よりはもう少し現代に近い近未来、「ストレートな宇宙SF」「太陽系を舞台にしたリアルなSF」とは解説にある文言ですが、そういうタイプの作品です。計算に(どうも)電卓叩いたり録音機器がテープレコーダーだったりする(らしい)ところがまた「1980年代に見た未来」みたいで、一周まわってむしろ今は心地よいなあ。
それで、ちょっとびっくりしたんですが、主人公のクリアスには同棲しているガールフレンドのヘザーというキャラがいて、これが実に薄っぺらく描かれて実に薄っぺらく退場してしまう。まあ低重力コロニーで生活していたキャラが高重力下の土星でミッションする話なんで、女性キャラを活躍させる余地も無いのかなーとか思っていたらですよ、
なんとBLだったの (小声)
この時期のSFでこの路線*3ってだけでも驚きなのに、インテリマッチョおじさんと天才早熟老化少年のそれってマニアック過ぎませんか?マニアック過ぎませんか会長!?
ひさしぶりにこのフレーズが過ぎった。
池澤春菜はガチ。
*1:https://abogard.hatenadiary.jp/entry/20141213/p1
*3:追記:考えてみると、そこも含めてクラークリスペクトなのかも知れませんな紳士( ˘ω˘ )