ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

サラ・ピンスキー「いずれすべては海の中に」

いろいろと高評価を見て手に取ってみた一冊…なんだけど、残念ながら自分にはあまり合わなかったなあ。ま、そういうこともあるのが本読みです。10年前なら河出の奇想コレクションで出ていたんじゃないかと思わせる、んー日常からすこし踏み出したような景色だったり認識だったりするような、そういうものを描いた作品群…なのかな。ジェンダー観が今風だなあと思わせますが、自分に合わなかった理由がそこなのだとしたら、それはちょっと危険な兆候なのかも知れない(笑)

多元宇宙に量子的に存在する様々な「自分」が一か所に集まり、そこで自分による自分の殺人事件が発生しそれを解決する「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」には、ちょっと藤子不二雄風味を感じたりしますね。あっちはタイムトラベルでたくさんの自分(あるいはドラえもん)が一か所に集うお話だったけど。

「深淵を後に歓喜して」が収録作の中では一番よかったんだけど、これが一番保守的なジェンダー観で書かれていると思うのは、それにも危機意識を持つべきなんだろうか。ともあれ年老いた夫婦の終活の光景を「船」のひと言でSFに仕立て上げる筆致に驚かされました。

「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」は変な話で、事故で右腕を失った青年が脳にチップを埋め込んでコントロールすらタイプの義手を移植したら、その腕は自分自身を道路だと認識していたという話。うん、何を言ってるか分からないと思う。いま書いてみてもなんだかよくわからない話だ。ただ、この認識のブレと再治療による喪失の物語は、多分映像化されても表現できないことで、自分で本を読んではじめて納得のいく「文字ならでは」の物語じゃないかなと思うのです。朗読を聞かされても読解には至らないんじゃないだろうか?そんな印象を受けたのが面白かった。

まあそんなところで。