ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

乾緑郎「機巧のイヴ 帝都浪漫篇」

「機巧のイヴ」シリーズ三部作の完結編、らしい。第1作*1、2作*2に引き続いてなのだけれどずいぶん間を開けてしまって、おまけに以前NOVAで読んだ番外編というのが実はこの第3作のその後を描いたものだったから、当時さっぱり意味が解らなかったので感想も載せてなかった*3。それが3部作のその後の話だというのも今回漸く気がついた次第で面目ない(´・ω・`)

 

今作は架空大正時代の日本が舞台ということで、やってることは大体「はいからさんが通る」です。女学校に通ったり関東大震災が起きたり満州国満州国ではないのですが)で映画撮ったりします。大杉栄みたいな無政府主義者も出てくるし甘粕正彦みたいな憲兵も出てきます。あまりにそれっぽいなあという気がしなくもないですが、前作でバリツ少年だった八十吉くんがバリツおじさんになっていたり、重症眼鏡っ娘だったフェル女史が重症眼鏡レディになっていたりします。鯨さんは相変わらず腰掛けに間違えられます。そういうところ、キャラクター描写は確かに良い。機巧人形(オートマタ)のグロテスクな技術性も良い。

 

とはいえこのラストはどうかと思う(´・ω・`)

 

これを書いちゃうのは少々残酷な感想かも知れませんが、元々時代小説出だった著者が時代小説に大きく揺さぶりをかけた最初の1冊が、やっぱりいちばん面白かったなあと。そんで本書刊行当時のキャッチコピー(らしい)「これが日本の三体だ」とかいう物言いは明らかに誇大広告で、むしろ作品にも作者にも失礼だろうと思う。大森望の巻末解説によると「三体」が掲載された雑誌に翻訳版が載ったとか、そういうことがあるらしいのだが。