柴田勝家の長編は初めて読んだな。
ウム、変な話だ。昭和初期を舞台に実在の人物を多数配して幻想的な世界を小説で描くというのはどうやったって「帝都物語」になりそうなものだけれど、「帝都物語」の特に丸尾末広画時代の極初期にあったような耽美さをフルスイングでブン投げて、南方熊楠というケッタイな人物*1を主人公に据え、もっと猥雑で豪放で乱心の果てに紡がれる、耽美な人造人間と量子論的いやそうはならんやろなっとるやろがい!みたいななんだその、
なんだろう(´・ω・`)?
便所で隣り合わせになった北一輝と自由に論争を盛り上げる(ちがうものもモリモリ盛り上がる)ところとかたまらんのだが、知性ある粘菌とか天皇機関とか、自在に駆使される日本語による奔放な発想と表記のイキオイとか、楽しいのはそういうところか。帯には「一大昭和伝奇ロマン」とある。
伝奇。
なるほど伝奇か。奇しものを伝えるロマンか。
西村真琴と「學天則」が大きな役割を果たすところは映画の方の「帝都物語」っぽくはあり、江戸川乱歩が出てきて謎の怪人がオートジャイロで逃走するところは映画の「K-20 怪人二十面相・伝」っぽくもある。フムン。
それとこっそり三島由紀夫が出てくるのも良かった。それが三島由紀夫だと気づいたのは「帝都物語」読んでたからなんだけどね。
なんにせよ楽しい作品だった。小気味よく章立てが分けられ話が展開するので、電車の中で少しずつ読むのに良い。大事。
*1:というのも大概フィクションに描かれた像ではあるが