ううううううううううん、前作「同志少女よ、敵を撃て」に比べるとどうも全般、
ぬるくね?
とは思う。
戦時下ドイツの青少年による反体制行為を描いた作品としては佐藤亜紀の「スウィングしなけりゃ意味がない」があるし海外ミステリーじゃフィリップ・カーのベルリン三部作とかハラルト・ギルバース「ゲルマニア」なんかあるしで、実はこの分野は結構なレッドオーシャンではある。ヴォネガットの「母なる夜」だってそれだしなあ。そういう先行作品に比べると凄味に欠けるきらいがありました。現在と過去を対比させ、やりたいことは「同志少女――」と同じ方向性にあるんだろうなというのは判る。アイデンティティクライシスに同性愛を持ってくる路線も同じだ。でもやっぱりこの話のエーデルワイス海賊団の行動は、どうもなんというかお気楽な一面が抜けきれないように思う。メインキャラクターが基本父親との関係性に断絶があることは興味深いんだけど、唯一それがないドクトルが、そもそもなんら内面性を伝えることなく退場してしまうのは残念。人は皆何かを爆発させたがってるってところが面白かっただけに。