原題を ”THE ROLLING STONES” という、ハインラインのジュブナイルでも未読だった1冊。カスターとポルックスの双子を擁するストーン一家による宇宙旅行の顛末を描くもの。パワフルなお祖母ちゃんと聡明な妻、問題児だらけの一女三男を支える一家の主ロジャー・ストーン氏が、家族全員に振り回されるもシメるところはきちんとシメる、家父長制ホームコメディみたいなものですかね。さすがに古いかなあとも思うけれど、今後4年間のアメリカSF界隈は男性原理ミリタリズムみたいなものが支配するのかなあとも危惧を覚える昨今、こういう素朴なお話が顧みられても良いかも知れません。
問題児と言いつつそこはハインラインのジュブナイルなもので、別にインモラルでもエビルでもないやんちゃな双子が行く先々で(と言っても月から出かけて火星と小惑星帯に向かうだけなんだけど)ビジネスに乗り出すところは、エンタープライズ精神万歳って感じではある。特に火星植民地で自転車を売り込むあたりはよかった。スペースコロニー内部とかテラフォーミング惑星都市とかで自転車って有用なアイテムだと思うんだけれど(環境を汚染しないクリーンな車輛である)、ドメスティックが過ぎるのかあんまり見た覚えがありません。月面ローバーとかにどうでしょうか?ダメでしょうか?
何か大きなストーリーがある訳ではなく、小さなエピソードを積み重ねていくもの、なのでちょっと「連続TVドラマ」みたいな感覚になる小品でした。それでも最後に提示されるビジョンは大きく遠くへ広がるもので、この邦題もまたよしか。
作中最も印象に残るヘイゼルお祖母ちゃん、やけに「月は無慈悲な夜の女王」みたいな過去を語るなあと思ったら、同作に出てたんですと。そして今作の後もハインラインの未来史に、時折顔を出すのだそうな。
つまり「月は無慈悲な夜の女王」はこの作品と世界が共通で、てことはすなわちあの世界にも火星人がいるのか……
