ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ナタリー・ゴールドバーグ「魂の文章術」

「文章を書くこと」についての本であって「文章の書き方」の本ではない。この本を読んだら読み手の執筆能力が向上したり、行き詰まっていた原稿に突破点を見いだせたり、喪われた執筆動機が再発見されるようなものではない。というわけでアニー・ディラードの「本を書く」と同じようなタイプの本。

abogard.hatenadiary.jp

こちらの著者は詩人が本業なのだそうで、ひとつひとつの言葉が直接的にエモーショナルな印象を受ける。また、日本人の禅僧に師事した仏教徒でもあり、ものの見方や考え方には日本のそれと親和性が高いような感も。

アメリカでは教科書に採用されているとのことで(州によりけり、でしょうけれど)、こういうことは日本の学校では教えてくれないよなあと思う。

 全身全霊でなにかをしているとき、人は孤独な旅人だ。友達がどんなに喜んでくれようと、応援してくれようと、それが自分の感情の強さに匹敵するとは思えない。自分が経てきたことを完全に理解してもらえるとも思えない。けっして負け惜しみを言っているのではない。本を書くとき、人は孤独なのだ。そのことを受け入れたうえで愛情や支援を受けるのはいいが、それに身勝手な期待をかけてはいけない。

本書エピローグより。原稿用紙の使い方や参考文献の提示書式などよりずっと大事なことだけれど、日本の学校ではこういうことを教えてはくれないよな。短い章でいくつものテーマを切り出していくようなスタイルなので、アタマから全部通しで読むのもいいけど、手元に於いて折々見返すのがいいのかなと、それは著者が冒頭で書いてるんだけどね(笑)

たぶんこの本がいちばん刺さるのは「書きたいけど書かないひと」じゃないだろうか。「書きたいけど書けないひと」とも微妙に違う、そういうひとの背中にナイフをブッ刺すような働きはあると思う。これ初版は1995年邦訳だそうだけれど、その時読んでたらどう受け止めたかなあ。面白かったです、薦めてくれた人に末尾ながら感謝を。