第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。文明崩壊後の世界で部活を営む少女四人が「コミケ」を目指して……という大まかな設定を聞いた時には、これは「けものフレンズ」「ケムリクサ」あるいは「終末トレインどこへ行く?」のようなロードノベルかと思っていたんだけれど、いざ読んでみたら全然違った。むしろ日常モノだった。文明が崩壊した後の日本で、ムラの因習に縛り付けられた少女たちの日常、中世的な社会制度へと退化していく社会で、それぞれヒエラルキーや貧富の格差で置かれた地位にありながら尚もがき続けるような、そんな話だった。作中、ある人物の残した言葉で
虚構とはいえど、エス・エフは現実社会の鏡である。舞台を将来や遐代(かだい)に仮託してはいても、その実は同時代の理念を活写しているのだ。十九世紀に階級社会の生末を、二十世紀に技術文明の前途を描いたエス・エフが執筆された如く、当代なら落魄と退廃の先にある理想を描出したエス・エフが書かれるべきだろう
とある。21世紀のいま、文明文化が喪われ反知性と迷信が支配する未来社会の在り様に現代と同様の悩み苦しみが活写されるというのは示唆的だよなと、昨日の選挙と今日の結果を見ながら思う。階級社会の中で「医者の娘」というインテリジェンスの特等席にいた主人公、ゆーにゃがその虚飾を引き剥がされるシーンは辛い。「村長の娘」という権力に直結した地位に居ながら、その実自分に出来ることは「なにもしないこと」だという比那子の立場は辛い。卓越した才能を持ちながら最下層の貧民であり続けなければならない茅が、その才能に希望を持つのは辛い。結局は傍観者でしかないスズの無力さも辛い。みんな辛い。救いは無い。
4人それぞれの葛藤を克服し(まあ、スズは葛藤なんぞしないんですが)旅を始めるシーンで物語は完結する。巻末のハヤカワSFコンテスト選評ではある委員が「現実逃避を超えた自殺行為」だと評していて、おそらくそれは正しい。その点ちょっと「メイドインアビス」風でもあるのかな。とは思う。
まず読者にキャラクター付けを見せてそこから設定を始めるとかの筆の運びの上手さ、色々と手慣れた感もある。なんにせよ読み易く面白く、あっという間に読み終えてしまうのは勿体ないので多少ブレーキをかけた(笑)
