ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

トラヴィス・バルドリー「伝説とカフェラテ 傭兵、本屋をたてなおす」

オークの女傭兵ヴィヴを主人公に据えたコージー・ファンタジー「伝説とカフェラテ」シリーズ第二巻。原題は ”Bookshops & Bonedust” でこれまたD&Dのパロディなんだけど、残念ながら邦訳ではそこまで拾えてはいない。前作の感想はこちらに。

abogard.hatenadiary.jp

続編ではあるけれど、お話自体は前巻で完結というか完成しているので、今回は前日譚。傭兵グループ「ラッカム大鴉団」に属する剣士であったヴィヴが、初めての戦闘で重傷を負い、とある港町マークで療養につとめるうちに出会った本屋を……というような流れ。前作同様「人間」以外のヒューマノイド、いわゆる亜人デミヒューマンが今回も多数登場し、オークからドワーフにエルフにノームにといった著名どころからラットキン(鼠人)やターペンテイ(蛇人)といった本シリーズオリジナル(だろう)なものも様々です。あんまり人間が出てこないものだから、このシリーズもしかして人間が存在しない世界観だったか?前回そのことを見落としてたか?などとあらぬ誤解を招いたぐらいだ(笑)いちおう人間は出てくるんだけど、「人間」という単語は使われていない模様。

それでヴィヴはひょんなことから出会ったラットキンのファーン(女性である)が営む本屋の経営再建に携わる訳ですが、それまで武辺一辺倒だったヴィヴが本(小説本だ)と出会い読書のすばらしさに開眼していくところ、ファーンがなぜ本を愛し他人に(他人の嗜好に合わせて)本を勧めるかを説いた辺りは大抵の本好きならじんわりくるものでしょう。いっぽうでパン屋を営むドワーフのメアリー(女性である)との百合恋愛一時の逢瀬だけどガチ恋モードにシフトアップ。みたいな濃厚展開もあります。オークとドワーフ百合です。ガチ濃い。しかし今回も食べ物は美味しそうで特にパンは絶品で、大抵の場合賄賂代わりにもなるw

原題にある通り「骨」も重要で、今回は明確な敵キャラクターとしてネクロマンサー「白のヴァリン」が登場し、骸骨(ワイト、とルビが振られる)とヴィヴが戦う場面も見られます。ひとつ気がついたんですが、こういうのを相手にさせておけば主人公は「不殺」でいられるんですね。あんまり死霊(≒ワイト)という感じではなく、邪まな魔法で動くスケルトンみたいな位置づけで。ヴィヴと並んで街を守る仲間の一人として、ノームの短剣使いガリーナが出てきて(女性である)、これは前作でパーティーメンバーの一員だったキャラだな。彼女もなかなかいい味を出しています。付き合い長かったのねふたり。

それと重要なキャラクターとして「ホムンクルス」が出てくるんですが、これも世間一般で見られる試験管ベビーのような存在ではなく、組み立て式の小型スケルトンみたいな存在です。D&D的な異世界ファンタジーとしてベタなところと独特なところとが混在する、ユニークな世界観ではあり。

果たして作者は日本製の異世界ファンタジー作品はどこまで擦っているのかなあ。前作もそうだけど今回もちょっと日本のファンタジー作品ぽいキャラとか、なんかね、出てくるのよねちょろっと。フリーレンとヒンメルよりはディードリットと老成したパーンみたいな感じのねー。

前作では武力による問題解決は完全に放棄されて完了するんだけれど、今作はまだそうはならない、武力から離れていてもやはり武力に頼っていくような、そういう逡巡が見られるのはよかったな。ただどうも、作者があまり戦闘シーンは書きたがらないのか、クライマックスの進行は急(笑)

それでね、読み終えた後でつくづく「日本人でよかった」と思いましたよ。いやね、読了後に知ったんですが原著カバーはこんなイラストで

https://www.amazon.co.jp/Bookshops-Bonedust-Travis-Baldree/dp/1250886104

ヴィヴの外観、肌は緑色で筋肉質、シーハルクみたいなイメージなんですね。そして普通に美人である。でもこっちはダンジョン飯のオーク族長妹リドみたいなイメージでずっと読み進めてたのだ。このほうがずっと可愛いのだ。ああ、日本人でよかった。

 

そしてこちらは前作の原著カバーである。

https://www.amazon.co.jp/Legends-Lattes-Travis-Baldree/dp/1250886082

注目すべきはサキュバスのタンドリさんで、向こうで「サキュバス」といえばこういうイメージになるんですね。

・赤い

・ツノが生えている

・えっちな水着は着ていない

 

ああ本当に、日本人でよかった。