ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジャネット・スケスリン・チャールズ「わたしたちの図書館旅団」

「あの図書館の彼女たち」作者による第二作。今回は第一次大戦と図書館を題材に扱うもので、前作の感想はこちらに。

abogard.hatenadiary.jp

前作はドイツ占領下のパリということでだいぶ複雑な人間模様を描いていたんだけれど、それに比べると今回はかなりシンプルで、分かりやすいお話でした。「荒廃したフランスのためのアメリカ委員会(CARD)」という実在した組織に属する図書館司書のジェシー(実在の人物)が主役となる1918年からの過去パートと、作家志望の女性図書館員ウェンディ―がCARDとジェシーの果たした役割を追い、それを作品にしようとする現代パートとの2つの構成で、女性の自立・独立や恋愛を描くものです。今回も現代パートというのは1980年代(1987年)で、何故この時代かというと過去と現代の人物が実際に出会うクライマックスを用意するためには、このあたりがギリギリなんでしょうね。

CARDというのはそもそもアメリカの大富豪モルガン家の令嬢アン・モルガンがパートナー(女性である)のアン・マリー・ダイクとふたりで始めた組織で、女性の社会進出という意味もあって、全編を通じてジェンダー的な意味合いは強いです。彼女たちが派遣されるのは西部戦線の最前線に近いブレランクールとその周辺で、一度ドイツ占領下に置かれて奪還された土地なので、土地にも住民にも戦争の傷跡は深い。対してドイツ軍は「顔の見えない敵」であって、ジェシーが直接ドイツ兵と対峙するのは休戦後労役に就いた捕虜と、そこから脱走した兵士による性的暴行の危機に陥りそうになる、ぐらいであって、あまり善悪の逡巡は無い。

フランス国民の生活再建が主たる任務のCARDのなかで、図書館の復興というのがどこまで重要なのか?という問題は起こるけれど、案外スムーズに、特に児童書と読み聞かせ会によって戦災被害を受けた人々の心情は解きほぐされていきます。児童書の普及ということに関してはかなり重要な役割を果たした人物なんですね、ジェシーは。

ようやく軌道に乗った頃に19818年春季攻勢(カイザーシュラハト)が発起し混乱は起こるのだけれど、やがて休戦は結ばれ一息ついたと思ったら、インフルエンザが蔓延してメインキャラでも無慈悲に死ぬ。とかあります。史実通りです。

現代パートでのウェンディ―の調査は、果たしてジェシーはこの戦争を生き延びられたのか?ということが焦点になるんですが、実在した人物であるんで、そうそう突飛なことにはなりません。恋人もゲットしてめでたしめでたし。

前作に比べてやや淡白さは感じるんだけど、巻末の著者解説を読むと、2023年のアメリカで戦争に反対し図書館の自由を訴える物語を書くというのは、やはり直球にやる必要があるのかな、とは思いましたね。

 

それと、「戦争が終わったので救急車を移動図書館に作り替えよう」というのはなにか良かったです。自分も始めて図書館に接したのはマイクロバスによる「移動図書館」でしたから。