愛は呪いだな、と思う。
梶尾真治はデビュー作「美亜へ送る真珠」をはじめ「愛と時間」をテーマにしたSF小説をいくつも書いてきた。多くの作品で人は誰かを強く、そして純粋に愛して、何か大きな行動を起こす。それはまるで人を縛る呪いのようでもある。本書は1994年に発表された「クロノス・ジョウンターの伝説」からはじまるシリーズの最新作品で、「―伝説」が当時朝日ソノラマの雑誌、獅子王じゃなくてグリフォンに変わっていたけれど、その表紙を北崎拓の鮮烈なイラストで飾ったことは覚えている。単発作品ではあったけれど単行本の際に新たなエピソードを書き起こし、その後も版型を変える度に新編を追加していくような形でシリーズ化が成されました。wikiでみたら舞台化とか映画化とかいろいろあったそうだけど、自分は最初の単行本だけをずっと大切に本棚に入れていた。なんかまあ、いろいろ思うところもあって。それで今年のSFカーニバルで梶尾真治先生にサインを頂く機会があって、はじめて時を進めてみた次第。
黎明というだけあってクロノス・ジョウンターが(ちなみにこれは人間を過去に投射するタイプのタイムマシンである。反作用とかある)開発され実験が開始された1980年代時のエピソードがひとつ。8ミリフィルムの中に焼きつけられた女性が夭折した過去を知り、メッセージを投射する「仁科克男の軌跡」ともうひとつ、1960年にそのメッセージを受け取り、その女性清水杏子を救うべく奮闘する「青井秋星の軌跡」の、ふたりの人間が純粋な愛によってひとりの女性を悲劇的な最期から救い出そうとする軌跡が描かれる。
「時間」というものも人間には容赦がなく、一度は回避できない悲劇として清水杏子は命を落とす。しかしそこから始まる人の想いはやがて長い時間を辿り、遂に絡まる二本の軌跡は奇跡を起こす。喫茶店のマスターは幸せな伴侶を得る。だいたいそういうお話。
ひと目で惚れた女性に命を投げ出したり終生を使い尽くしたり、このシリーズ(だけではないが)に出てくる男性の純愛、献身ぶりはだいぶ度を越しているのだけれど、そういうものを恥もてらいも無く書けることもまた、作家の筆力というものでありましょう。徳間文庫版の「クロノス・ジョウンターの伝説」読みたくなったけど、どこにもないのなこれ(´・ω・`)
