ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

米澤穂信「倫敦スコーンの謎」

小市民シリーズ短編集第2段。「巴里マカロンの謎」からもう6年経ってるのかー。相変わらず楽しいもので、シリーズファンなら迷いなく手に取ることでしょう。高校2年の春から夏の時期、小山内さんが悪の組織と戦っていた頃の話だ。嘘は言っていない。そう、嘘は言っていないんだよな本格ミステリーだものな。

思いのほか軽い読み口でスラスラ読めるのだけれど、おっかないさんもこざかしいばとくんもニコニコした言動の一枚裏にはお互い秘めたるものがあって、そのあたりのキャラ造形も冴えています。今作で初登場しそれほど出番がないキャラもだいぶ魅力的で(島井さんが実にいい感じだ)、今やベテラン本格ミステリー作家となった著者のデビュー作がライトノベルレーベルで出てたことと、無関係ではないんだろうなと思いましたね。

「ミステリーは伏線を回収するもの」で、それが伏線、手掛かりであることをどこまで読者に気づかせるか。その案配が実に巧妙に配置されていて、読んでいて何か引っかかりのようなものを感じたら、それは大抵手掛かりです。そういうタイプのミステリーのお手本みたいな作品群で、いまミステリー書きたいって人でまさか米澤穂信を読んでない人もいないと思うけれど、いまミステリー書きたいって人は絶対読むべき。

冒頭の一本、「桑港クッキーの謎」でだいぶ露骨に提示される引っかかりが、最後の一本「維納ザッハトルテの謎」で回収される手掛かりなんだけれど、これはむしろ読者のミスリードを誘うもので、最後に明かされる解は苦く、そして酸っぱい。そしてどの作品も、真実の最後には一歩届かないような、決して探偵が全知全能ではないような、そういう書き方をしています。

アニメのキャラで脳内再生されるのはむしろ有り難いことで、この短編シリーズもアニメにならないかな。

 

あーあと「巴里マカロンの謎」の「えっ、また?」は別に間違いんじゃなかったんだなといまさら気づく阿呆な読者である(´・ω・`)