ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

小田雅久仁「増大派に告ぐ」

増大派に告ぐ

増大派に告ぐ

第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。同賞の作品を読むのは実に久し振りで、雑誌掲載された冒頭を読んで以来ものすごく楽しみにしていた一冊。内容はだいたい…


誇大妄想のホームレスと家庭内暴力を受けている中学生がお互いに被害者意識を云われのない社会憎悪に転嫁し攻撃衝動を内包しながら生きてきてある日出会い、そして――


そして何が起きるんだろう、な出会い系小説。なにしろ抜粋された冒頭は件のホームレスの妄想が延々書いてるようなシロモノだったんでそりゃわくわくしますわな。しかし実際読んでみると思いの外普通に普通小説していて、これならNHKで単発ドラマに出来るんじゃないかな。「フランダースの犬」が好きな人なら楽しめると思いますよいやほら書影でわかるように犬も出てきますから。いやーこころあたたまる(棒読み)


ごめん今オレうそついた。


犬が出てくる事以外「フランダースの犬」との共通点などひとつもないし、読んでも心は暖まらない。むしろ暖まるのは身体の方で、その…


嫌な意味で(ぼそ)


<追記>

ふと思った。この本手にとって読んだ人の多くは「自分は減少派である」と考えがちなのではないだろうか*1、そしてその上で実はそうではないのだ、と作者から突き放されるメッセージがあのラストシーンであり「増大派に告ぐ」というタイトルなのかも知れない。

*1:AXNミステリーBOOK倶楽部のメンバーなんかまさにそんな感じだったw