ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

小説・ファンタジー

ジャスパー・フォード「クォークビーストの歌」

クォークビーストの歌 (竹書房文庫) 作者:ジャスパー・フォード 竹書房 Amazon 「最後の竜殺し」に続く「カザム魔法マネジメント」シリーズ第2巻。前巻が面白かったので続けて読んでみた。 abogard.hatenadiary.jp シリーズ物ということで第1巻ほど設定的な…

ルーシャス・シェパード「美しき血」

美しき血 竜のグリオールシリーズ (竹書房文庫) 作者:ルーシャス・シェパード 竹書房 Amazon 「竜のグリオールに絵を描いた男」「タボリンの鱗」に続く「竜のグリオール」シリーズ第3巻、最終巻にして唯一の長編となるもの。 abogard.hatenadiary.jp abogard…

エリザベス・グージ「まぼろしの白馬」

まぼろしの白馬 (岩波少年文庫) 作者:エリザベス グージ 岩波書店 Amazon ツイッターで紹介されてるのを見て読む。面白かった。ファンタジーというかおとぎばなし、メルヘンと言った方が近いのかも知れないけれど「綺麗な伝奇」のようでもある。両親を亡くし…

ミック・ジャクソン「10の奇妙な話」

10の奇妙な話 (創元推理文庫) 作者:ミック・ジャクソン 東京創元社 Amazon ファンタジー……なのかなあ。まあファンタジックではあるのだが、幻想・怪奇趣味があれば琴線には触れると思いますが、例えば「霧に橋を架ける」とか「地球の中心までトンネルを掘…

ジャスパー・フォード「最後の竜殺し」

最後の竜殺し (竹書房文庫) 作者:ジャスパー・フォード 竹書房 Amazon 何気なく読んだらすごく面白かったんで拾い物というか掘り出し物というか。竹書房文庫もSF界隈ではよく取り沙汰されるようになったけれど、ファンタジー方面だと「竜のグリオール」シリ…

スティーブ・ジャクソン「トロール牙峠戦争」

トロール牙峠戦争 (FIGHTING FANTASY) 作者:スティーブ・ジャクソン 新紀元社 Amazon 古典的なヒロイックファンタジー小説が読みたくなって。ゲームブック「ファイティング・ファンタジー」シリーズの世界”タイタン”で起きた戦いを描いたこの作品、本来なら1…

武石勝義「神獣夢望伝」

神獣夢望伝 作者:武石勝義 新潮社 Amazon 日本ファンタジーノベル大賞2023受賞作、いまはこういう言い方をするんですね、その作品に改稿を加えて刊行されたものです。架空の中華風異世界を舞台に歴史小説的なアプローチで描かれたファンタジー作品というと元…

エドワード・ケアリー「望楼館追想」

望楼館追想 (創元文芸文庫) 作者:エドワード・ケアリー 東京創元社 Amazon <アイアマンガー三部作>がずっと気になり、そしてずっと読んでいないエドワード・ケアリーのこれがデビュー作だと聞いて読んでみる。もともとは2002年に文芸春秋から出て2年後に文…

文:藤浪智之 絵:佐々木亮「きみが決めるストーリーブック ドラゴンカリバー」

www.daiso-syuppan.com うわさのダイソー100円ゲームブック。とういうわけでamazonの書影が貼れないので大創出版の商品ページを貼っておきます。小説というかまあゲームブックなんですが、簡単な内容とは言えこの値段でゲームブックが遊べるというのはちょっ…

モーリス・ドリュオン「みどりのゆび」

みどりのゆび (岩波少年文庫) 作者:モーリス ドリュオン 岩波書店 Amazon これもまた岩波少年文庫で長く愛されている名作。おとぎばなし、幻想、絵空事、夢、希望、たぶんそういったことが濃縮されているタイプのファンタジーなんだろうなあ。あとがきにある…

いぬいとみこ「ながいながいペンギンの話」

ながいながいペンギンの話 (岩波少年文庫) 作者:いぬい とみこ 岩波書店 Amazon 動物が人間と同様の価値観や思考方法を持つかどうかは極めて疑問なことだけれど、ファンタジー小説に於いてはその限りではない。洋の東西を問わず動物文学は昔からファンタジー…

福永武彦「古事記物語」

古事記物語 (岩波少年文庫 508) 作者:福永 武彦 岩波書店 Amazon ファンタジーというか神話なんですが、「物語」と題されてるしまあファンタジー小説というカテゴリにしておこう。ちょっと児童文学を読みたくなって、あと池澤文筆一族初代の本って読んだこと…

伊藤典夫・編訳「吸血鬼は夜恋をする」

吸血鬼は夜恋をする: SF&ファンタジイ・ショートショート傑作選 (創元SF文庫) 作者:ヤング、マシスン他 東京創元社 Amazon 当初タイトルからホラーSFの作品集かと思ったけれど実際には副題にもあるように「SF&ファンタジィ・ショートショート傑作選」であ…

光原百合「扉守」

扉守(とびらもり) 作者:光原 百合 文藝春秋 Amazon 現代日本瀬戸内海に面した架空の街(尾道がモチーフ)「潮ノ道」を舞台に、そこで起きる小さな、少し幻想的な出来事を綴る連作短編集。持副寺の住職了斎なる人物が毎回登場するキャラクターではあるけれど…

T・キングフィッシャー「パン焼き魔法のモーナ、街を救う」

パン焼き魔法のモーナ、街を救う (ハヤカワ文庫FT) 作者:T キングフィッシャー 早川書房 Amazon 原題を”A WIZARD'S GUIDE TO DEFENSIVE BAKING”という。「救う」と「守る」にはややニュアンスの違いを感じるがまあともかく、評判通りの面白さではある。パン…

ディーノ・ブッツァーティ「モレル谷の奇蹟」

モレル谷の奇蹟 作者:ディーノ ブッツァーティ 河出書房新社 Amazon あらかじめお断りするとこれは別にファンタジー小説ではない。「小説」ですらない。体裁を見ると絵本のようだけれど「絵本」でもない。では一体何なのかといったら、「架空の聖所で崇めら…

M・ジョン・ハリスン「ヴィリコニウム パステル都市の物語」

ヴィリコニウム〜パステル都市の物語 (TH Literature Series) 作者:M・ジョン・ハリスン 書苑新社 Amazon 昨年読んだサンリオSF文庫「パステル都市」*1の新訳版に加えてヴィリコニウムもの短編4本を収録。翻訳はどちらも同じ大和田始によるもので、40年以上…

劉 慈欣「火守」

火守 (角川書店単行本) 作者:劉 慈欣,池澤 春菜,西村 ツチカ KADOKAWA Amazon 「三体」の人の作品だけれど俺「三体」読んでない(´・ω・`) 池澤春菜嬢の翻訳本ということで手にしました。マルチリンガル面目躍如だ。 絵本と聞いていたけれど新書サイズの短編…

シオドア・スタージョン、G・K・チェスタトン他「夜の夢見の川」

夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫) 作者:シオドア・スタージョン,G・K・チェスタトン他 東京創元社 Amazon 「奇妙な味」作品を12本収めたオリジナル・アンソロジー。中村融の編集によるもので「街角の書店」*1に続くシリーズというか姉妹巻。編…

国広仙戯・不知火昴斗「UNKNOWN―狂月の女神」

ホラー風味の伝奇ファンタジーというカテゴリーになりましょうか、BOOTHで販売されている私家版を拝読。以前よりpixiv FAN BOXでささやかながら支援させていただいている不知火昴斗さん原案の物語を「リワールド・フロンティア」シリーズ著者、国広仙戯さん…

川崎康宏「銃と魔法」

銃と魔法 (富士見ファンタジア文庫) 作者:川崎 康宏 メディア: 文庫 1994年刊行の、書影の帯にもあるように第5回ファンタジア長編小説大賞準入賞作*1。刊行当時読んで随分面白かったのをよく覚えていた一冊が、たまたま神保町@ワンダーの路面棚で110円の値…

森見登美彦「四畳半タイムマシンブルース」

四畳半タイムマシンブルース (角川書店単行本) 作者:森見 登美彦 発売日: 2020/07/29 メディア: Kindle版 原案上田誠とあってなんじゃらほいと思ったら、「壊れたエアコンのリモコン*1を手に入れるためにタイムマシンで過去に行く」というお話の中核になると…

ロビン・スローン「ペナンブラ氏の24時間書店」

ペナンブラ氏の24時間書店 (創元推理文庫) 作者:ロビン・スローン 発売日: 2017/02/11 メディア: 文庫 いまは文庫になっているのか。「ロイスと歌うパン種」*1のひとの作品で、今年続編というか前日譚が出るとかで読んでみる。一風変わった古書店の、その奥…

ミック・ジャクソン「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」

こうしてイギリスから熊がいなくなりました 作者:ミック・ジャクソン 発売日: 2018/08/10 メディア: 単行本 イギリスには熊がいないそうである。 言われてみれば確かに聞いたことがない。ヨーロッパで熊と言えば(イギリスはヨーロッパかという疑念はさてお…

酒見賢一「後宮小説」

後宮小説(新潮文庫) 作者:酒見 賢一 発売日: 2014/08/01 メディア: Kindle版 「改版」というのもあるらしいけれど(amazonで出てくるのはそれらしいのだけれど)、読んだのは平成五年刊行の文庫本(の、二十一刷だった)。第一回ファンタジーノベル大賞受…

チャーリー・ジェーン・アンダース「空のあらゆる鳥を」

空のあらゆる鳥を (創元海外SF叢書) 作者:チャーリー・ジェーン・アンダーズ 発売日: 2020/05/09 メディア: Kindle版 びっくり、セカイ系小説でした。 なんと懐かしい響きかー! 魔法使いの少女と、科学者の少年。どちらも天分の才に恵まれ、どちらも家庭…

ルーシャス・シェパード「タボリンの鱗」

タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集 (竹書房文庫) 作者:ルーシャス・シェパード 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2019/12/26 メディア: Kindle版 なぜかKindle版しか出てこないが読んだのは文庫版です。別にアフィやってる訳でも無いし、そういう区…

フォンダ・リー「翡翠城市」

翡翠城市(ひすいじょうし) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045) 作者:フォンダ リー 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/10/17 メディア: 新書 新ハヤカワSFシリーズというのも様々なカラーの作品を出していて、本書はいわば「現代異世界ファンタジー」み…

ジョーン・リンジー「ピクニック・アット・ハンギングロック」

ピクニック・アット・ハンギングロック (創元推理文庫) 作者: ジョーン・リンジー,井上里 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2018/12/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 怖ッ!! あー、なんだろうこれ。そもそもなに小説なんだ?って…

森見登美彦「熱帯」

熱帯 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/11/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る すごく不思議な作品ではあった。初読でかなり、動揺するほどの読後感を得たのだけれど、落ち着いて再読し、落ち着きを得る(なん…