ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ロビン・スローン「ペナンブラ氏の24時間書店」

 

ペナンブラ氏の24時間書店 (創元推理文庫)
 

 いまは文庫になっているのか。「ロイスと歌うパン種」*1のひとの作品で、今年続編というか前日譚が出るとかで読んでみる。一風変わった古書店の、その奥の書棚にある会員制の貸出本を巡る謎解き。存在しないはずの本に秘められた謎をグーグルやらなんやらの最新テクノロジーを駆使して解明していくと、そこに立ちはだかるは500年間それらの本の管理と解明を続けてきた秘密組織で…などと書くといかにも対立軸になりそうだけれど、パン種同様決してそうはならないところは面白かった。しかし主人公のクレイ君があまりにパッとしない青年な割りに周囲には天才だの美女だの大金持ちになった親友だのがわらわら出てきて、なんとなく他力を駆使してスムーズに問題解決…というのも近年のアメリカ製フィクションで時々見るよな。

ところで本作、主要人物のひとりが非白人(どうもイラン系らしい)なのだけれど、そのことをはっきりとは明示していないのですね。人種自体がお話には全くかかわってこない要素なので「チェーホフの銃」にはならないのだけれど、欧米人なら名前で見当つくのかな?ともかく、そういうフラットなセンスは好きです。

 

しかし作品内で描写されるグーグルの様子やグーグル社員が「グーグラー」としてなにかハイ・ソサエティーのように扱われている様は、なんつーかファンタジーだなあ。テクノロジーエルフか。