ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

D・H・ウィルソン&J・J・アダムズ編「スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選」

ビデオゲームをテーマにしたアンソロジーということで、創元SFのラインナップとしては先日読んだ「この地獄の片隅に」*1の流れなのね。原書は全26篇のところを12篇に削っているのは「傑作選」だからまあいいのか。しかし原書が500ページ超のアンソロジーというのはもう紙ベースで考えてないのだろうなあ。ことによると一本ごとのバラ売りをやってるのかしら、知らんけど。

ゲームとSFというのも昔からあるけれど(「エンダーのゲーム」なんて直球だ)昨今の作品群だけあって昨今のようなFPSオープンワールドだったりVRだったりするものが多いです。そこを敢えてオールドタイムなテキストアドベンチャーを取り入れるものもありで、バラエティは豊かだ。VRFPSといえば昔SFマガジンVR特集で読んだなーと思いながらページを進めていたらまさにその作品、ヒュー・ハウイーの「キャラクター選択」が載ってて嬉しい再会…とはいえ、巻末解説には

コリイ・ドクトロウ「アンダのゲーム」以外はすべて本邦初訳・初出だ。

なんてあってちょっとモニョる。そのコリイ・ドクトロウ、「マジック・キングダムで落ちぶれて」の人なんですね。あの作品の設定は先進的だったなーとそれもまた懐かしく。いやストーリーはちょっとその、ね*2。とはいえ「アンダのゲーム」は本書収録作の中ではいちばんよかった。いかにも最近のアメリカSFらしいジェンダーポリティカル・コレクトネスが題材なので苦手な人は苦手かもしれないけれど。

ゲームというのは実に幅広い概念で、ゲームをテーマにした小説というのも当然幅広い内容になる。現実と虚構、自我と自認、ループとリトライとまあ色々で、自分が余りゲームをやらない人間だから、ゲーム小説の本質に、果たして触れられているのいるだろうかという疑念は、ちょっとあるのですけれど。

 

しかし古橋秀之の「ソリッドファイター」は面白かったですねーとふと*3。そういえば格ゲーを扱った作品が載ってないなこれ。