「ファンタジーの練習帳」というサブタイトルに惹かれて読んでみる。童話というか寓話めいた短めの短編(重複表現)が20本、すべて結末が3通り提示されるマルチエンドの作品集。そういう構成の短編小説もあるけれど、1冊全部がそれというのも珍しい。だいたいハッピー・バッド・トゥルーみたいに3つあるんだけれど全部が全部そうでもなく。また最後には「著者の結末」としてそれぞれの3つのうちどれが一番いいと(自身が)思っているかが明示される。
巻末解説によるともともとはラジオ番組だったそうで、途中まで朗読を行いそこから先にどんな結末を繋げるのかを、スタジオで子どもたちとディスカッションして作り上げたものなのだそうな。原題は「遊ぶためのたくさんの物語」、邦訳も1981年の筑摩書房版では「物語遊び――開かれた物語」で、お話を考えることを「遊び」として捉えた練習帳なのですね、これは。なので読んだ人間が新たに自分自身の結末を考えてもいいのでしょう。お話を考える原点ってたぶんそういうものだ。それを「ごんぎつね」でやらすなニッポン(´・ω・`)
解説には同著者による「ファンタジーの文法」からの引用があってこれも興味深いもの、読んでみようかなとも思うけれどこれ小説書くというより児童教育に関する本らしい。ただ「ファンタジー」には当然そういう役割もあるのだし、「日本のファンタジーは似非ヨーロッパばかりだ」なんて言う人は正直視野が狭すぎる。