ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

松田未来・※Kome「夜光雲のサリッサ 07」

 

ロシアの「火球の子」ヴェラが2巻以来の表紙を飾る第7巻、背後の機体はIOSSロシアの新型「ジャール・プチーツァ」。いちおうSu-57という実機をベースにしているけれど、巨大なロケットブースターと機体後部に独立した管制ユニットを搭載し、合体というか分離が出来るのかな?ウルトラホークかシュピーゲル号かっていう、極めてSF度合いの高いものです。お話の方は前巻に登場した巨大人工島「反撃の狼煙(ブラエヌンティ・イグネイス)」に全ての火球の子が集い*1、いよいよ反撃開始だというところでハタと気が付く。人工島にスーパー戦闘機で怪獣と戦うってこれゼロテスターじゃないか。

なるほどなーと思いつつ読み進めていくと「反撃の狼煙」は核攻撃を受けてぶっ飛んでしまうのであったええええええ。

 

なんてな(´・ω・`)

 

「人間の敵は人間だ」をやってタイフーン級原子力弾道ミサイル潜水艦*2から発射されるSLBMを、しかし「人間の味方は人間」で、アメリカ海軍のアーレイ・バークイージス艦「ディケイター」がスタンダードSM-3で弾道ミサイル防衛するシークエンスがいちばんツボだった、戦闘機マンガなのにw しかしキネティック弾頭による迎撃シークエンスをマンガで読んだのは初めてじゃなかろうか。

 

1発は迎撃に成功するものの2発目は着弾、どうなるのじゃあ!と思ったらどうにかなってしまうんだなこれが。マンガだからな。SFだからな( ˘ω˘ )

 

次巻以降はやっぱり宇宙SFになって行くんでしょうか?大気圏外に出ちまうとヒコーキ飛べませんが…?

*1:いやひとり敵側についてるのがいるけどさ

*2:もちろんロシア海軍に唯一現存する「ドミトリー・ドンスコイ」である

国広仙戯・不知火昴斗「UNKNOWN―狂月の女神」

ホラー風味の伝奇ファンタジーというカテゴリーになりましょうか、BOOTHで販売されている私家版を拝読。以前よりpixiv FAN BOXでささやかながら支援させていただいている不知火昴斗さん原案の物語を「リワールド・フロンティア」シリーズ著者、国広仙戯さんの手によって小説化、総ページ数568P、装甲厚28mmの大ボリュームです(装甲って言うな)。

ここのところメンタルはガタガタのフィジカルはボロボロで、なかなか長編小説を読み辛い体調が続いて果たしてこの分厚い本をちゃんと読めるんだろうかとやや慄いたのですが(笑)スピーディーな展開と読みやすい筆致で無事読み終え。

現代よりほんのわずかに時間の進んだ近未来の日本で起きる猟奇殺人事件と暗躍する謎めいた人々、渦中のヒロインは勝気な女性警官。これまでイラストなどで断片的に伺ってきたストーリーと世界観を漸くひとつの物語として接種いたしまして、マンガで言うならジャンプよりは「少年キャプテン」とかそっちのノリだろうみたいな話にようやく得心することに。オーセンティックな「狼男」事件が展開する中で、当初から非常に胡散臭い人物が1人いて、なるほどそっちの謎解きはメインでは無いのだな、ではメインはどこに在るのだろうなと思ったら、

 

タイトルにちゃんと書いてありました。これは女神のお話で、狂った月「の」女神の話であります。

 

高城警部補が好きすぎて困りますw

 

ではUNKNOWN、未知のものとはなんだろう?ホラーで「未知」といえばやっぱり御大ですが、狼男や吸血鬼といった伝統的且つよく知られた怪異の中にあって、人が未だ知り得ぬものとはつまり自分自身とその在り様である。そんな読後感を得ました。ただもうひとつ謎めいてわからないのはロウのキャラクター性か。本文は基本的に三人称で、ヒロインの巴のパートだけは巴の一人称で心情含めて語られるという形式なのですが、初回販売分に付属するボーナストラック小冊子には巴の一人称と鹿角の一人称による2編が掲載されています(鹿角パートのみ不知火昴斗さんの文章となる)。3人いるメインキャラの中で、常に人を食ったような言動*1をするロウだけが、己の内面を語っていないのですね。さてこれはどういう意味合いがあるのだろう?うん、それはきっと続きが出ればわかるんですよきっとそうだ。

 

たま~にやるんですが、本書を読む際に各々のキャラクターに脳内CV当てて読んでました。最近の作品では無く、90年代ぐらいのアニメやその時期の声優諸氏をディレクションしながら読むと楽しかったですな。具体的に誰がどうこうというのは読み手の個人的な特権に属するので、ここでは詳らかにしませんが(笑)

 

そして本文ラストには意外な人物が意外な形で登場して、読者は椅子から転げ落ちそうになるのである。本を読んで椅子から転げ落ちそうになるというのも、それも読み手の特権です( ˘ω˘ )

*1:直接的な意味ではない

美少女ロボプラモデル「MoMo」を作ってみた

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そもそも「MoMo」とは何ぞや。キュルチェル型ってなーに?というところから話さなけらばならないのですが、詳しい説明についてはこちらをご一読ください。 簡単に言えば島本娼弘氏オリジナルデザインのロボット美少女をプラモデル化しようというクラウドファウンディング企画のリターン品で、一般販売されているものではありません。

なのでこの記事を読まれた方が「どれちょっと作ってみるかな」などと思われても、いまからの入手は難しいかも知れないです。いちおう念のため。

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ジョン・クロウリー「エンジン・サマー」

 読んだ。とだけ記しておく。

 

正直うまいこと吸収できなかったというか乗れなかったというか。オチは面白かったのだけれど。ああでも多分、これは記録しておく必要があるだろう。

 

思うにこの本、「ヨコハマ買い出し紀行」のネタ元のひとつじゃないでしょうか。

葛原和三「機甲戦」

「機甲戦の理論と歴史」*1著者による、同一テーマとなる一冊。既刊の自著をもとに大幅に書き直して、新たに再構成した旨が前書きにもある。なので内容は重複するところもあるのだけれど、前著よりは日本の機甲の変遷(それは旧軍と自衛隊との間に連続性を持つものである)について、多くのページが割かれている。諸外国での編成や運用、用兵思想の発達についても、それに対して本邦はどうであったかという意識?を感じる。

個々のエピソードもより深く書き込まれていたり、この10年で日本を取り巻く国際環境も日々様変わりしているので、前著があっても十分読み応えのある内容でした。なんなら両方手元に置いて読み比べても良いかも知んない。

 

やらんか(´・ω・`)

 

巻末に付録として「この道行けば……」と題された、「体験で綴る戦車部隊勤務」というまあエッセイかな。そういうのがあって、著者の現役時代のエピソードが語られています。ところどころ既存の戦車関係本で見たような文章もあったけれど、機甲生徒隊の一隊員であった時期から一佐の大隊長に至るまでの時代を、陸上自衛隊に配備される戦車と運用の変遷を追いながら、そして階級と役職ごとに部下への立場や兵器に対する見方が変わっていくのを見られるのは面白いな。

 

マンガやアニメでよくある「現場に居たいからずっと昇進しない軍人」なんてナンセンスです(´・ω・`)

 

アラン・ムーアヘッド「砂漠の戦争」

第二次世界大戦のアフリカの戦いの開始から終結までをイギリス軍からの視点で包括的に描いた内容で、10代の頃に1度読んだものを久しぶりに再読。

Amazonで書影が出てるのは最近の復刻本で巡行戦車Mk.IVかな、それがカバーイラストなのだけれど、自分が読んだのは今回も10代の頃も本来北アフリカ戦線には配備されなかった(それどころか開発さえされていなかった)重駆逐戦車エレファントが描いてある。アフリカだから象なんだろうかまあいいか。内容としてはさすがに古いものであるけれど、従軍記者による見聞録というか旅行記?みたいな温度で記述されている感もあってなんだろう、実感はあるけれどどこか抑えた論調も見て取れる…ような。

そもそもこれを読み直そうと思ったのは例の「イタリア軍砂漠でパスタ伝説」 の大元ってこの本だよなという記憶があって*1、実際どういう記述だったのか確認したいなーと思っていたのです。なので当該箇所を引用してみる。

 

スパゲッティは青い紙の包装で、戦前のイタリアの食料品店にも負けないぐらい種類も豊富なマカロニその他の小麦粉製品の大袋と一緒に貯蔵されている*2

 

イタリア製のトマト・ピューレで味をつけたスパゲッティ入りのシチュー、イタリア製の罐詰の牛肉、イタリア製のパルメザン・チーズを、イタリア製のミネラル・ウォーターで流し込んだのだ*3

 

彼らは水の補給にも天才的な能力を発揮していた。パルディアからのパイプ・ラインは完成寸前だった。間もなく、砂漠に大々的な野菜園まで作りあげていただろう。砂に穴を掘ったベドウィン水飲み場という記憶のあるブク・ブクには、今や蒸気機関車の給水に使われるような背の高いポンプがずらっと並び、大きな地下の貯水槽が二つもできていた*4

 

スパゲッティと、水の補給に関する箇所はこれぐらいか。「スパゲッティ入りのシチュー」というのは妙にうまそうだなーと、初読当時も思ったものです。なのでまあ、本書の記述を信じる限りにおいては、「イタリア軍は砂漠にロングパスタを持ち込まなかった」と断言は出来ないような気もする。もっとも、原書でどうなっているかをみないとホントのところはわからないんでしょうけれどまあ、備忘録的に。

 

六月二六日、イギリス軍の迎撃態勢がととのったとはまだとてもいえないうちに、マトルー周辺の崖の上で、主としてニュージーランド軍師団と、ドイツ軍第九〇軽歩兵師団および枢軸軍戦車隊の間に、流動的で血なまぐさい戦いが展開された。信じられないほどの勇気の持ち主であるフライバーグは、銃剣突撃こそ歩兵の真髄という信条のもとに、麾下のニュージーランド兵を訓練してきていた。これまで、クレタ島でも砂漠でも、鬨の声をあげ、銃剣をかざして襲いかかってくるマオリ族の兵士に、進んで立ち向かおうという部隊は、枢軸側には一つもなかった 。ドイツ軍も、その例外ではなかった*5

 

これはスパゲッティとは関係なく(笑)、1942年6月のロンメルによるトブルク攻略あたりからの引用なのだけれど、ここに限らず本書ではニュージーランド軍兵士の精悍さについて、折に触れて賛辞が送られています。現在のニュージーランド軍が相当小規模な組織(陸軍なんて2個大隊とちょっとしかない)なのとは隔世の感だなーと。LRDGの要員も結構な割合でニュージーランド兵だったんだよな。

*1:実際にはボードSLG「アフリカン・ギャンビット」の補給ルールが火元なんだろうけれど

*2:42

*3:56

*4:52-53

*5:268

フィリップ・カー「死者は語らずとも」

新グンターシリーズ3作目。シリーズ全体では5作あるそうですが、現在のところ邦訳は本書で止まっているようです。 今後どうなるかはわからないけれど、さすがに5年開いたら普通には続かないだろうなって(´・ω・`)

 

今回は全体が2部構成となっていて、前半約三分の二は1934年のベルリン、刑事警察を辞したグンターがアドロン・ホテルの警備員(いわゆる「ホテルの探偵」というやつですね)をやっている時期が舞台。すでにナチスは政権の座にあり日々権力を強めていく時代にあってなお反骨精神豊かな我らがグンターですが、例によって簡単に拉致されたり暴行されたり屈服したりする。屈服からの反撃というのは冒険小説によくある構図だけれど、いつも負けっぱなしなところもいつものグンターではある。2つの死体をきっかけに2年後に迫ったベルリン・オリンピック開催に関する犯罪を糾明するというのが前半部のテーマで、そこにはユダヤ人弾圧やらいろいろ絡むわけですが、例によって美女と絡んだりします(肉体的な意味で)黒幕を突き留め陰謀を暴かんとするや拉致されて暴行されてそこで屈服しなけりゃヒーローなんですが、屈服しちゃうんだなこれが。グンター、ああグンター…

 

第2部は前作でアルゼンチンを命からがら逃げだして4年後、1954年のキューバハバナが舞台となります。バチスタ政権が強権を敷いてカストロ率いる反乱軍が蠢動する革命前夜の時代ってなんでそんなところばかり行くのかグンター。前作ラストではアルゼンチンに残したヒロインの身を強く案じて(そして悲観して)終わってたのですが、4年後の今はそんなことすっかり忘れて愛人囲って自堕落に生活してましたグンターああグンターって感じだな(´・ω・`)

 

そこで第一部の関係者たちと劇的な再会を果たし、いろいろあって漸くにかつて屈服した相手に反撃を遂げる。という展開…ではあるのだけれど、結局キューバ政府軍情報部の手先というか走狗に成り下がって終わるというなんかこの、ここで終わらせちゃダメだろうっていいのかなこれ。

 

続巻ではおそらく革命に打倒されこの地を去るような展開になることは予想に難くない。それが面白いかどうかは全然わからない…