ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

今日泊亜蘭「光の塔」

光の塔 (ちくま文庫)

光の塔 (ちくま文庫)

 

 日本SF界の歴史に残る古典的作品。

読み始めてみたらどうも既読感があって「これは以前読んでたかなー」と思ったんだけれど、途中から明らかに未読の展開であった。思うに、以前手を出した時は途中で挫折したんではなかろうか。主人公の水原中佐のキャラクターが共感できないを通り越して嫌悪感さえ覚える有様なので…

 

まあなんというか、歴史ですね。「未来からの侵略者が現代を襲う」ものなのだけれど、現代たる21世紀の在り様が古いというか絵空事過ぎるというか太平洋いや大東亜戦争そのまんまじゃないのかという感も有りで(´・ω・`)

 

「宇宙兵物語」とか「怪獣大陸」とか好きなんだけどなあ。

ああ「宇宙兵物語」は前に読んでましたね*1。「怪獣大陸」も読み直したいとこだけど、まあ難しかろう…

シオドア・スタージョン フリッツ・ライバー他 中村融・編「猫は宇宙で丸くなる」

 アーサー・マッケンに「白魔」という小説がある*1。有名な作品で何度か読んでるのだけれど、感想を残したことは無かったか。かいつまんで言うと「白魔」というのは一人の少女が魔術師たちによって虜にされ仕込まれていく様を、いわば生贄の視点から描いたような(生贄と断言してよいのかは微妙なのだけれど)一本です。ほんでこの猫SFアンソロジーですが、

猫という生き物が如何にして人間を――とりわけ作家と呼ばれる種類の人間を――虜にし仕込んでいるかを、いわば生贄の視点から描いたもの、といえましょうか。日本では神林長平が特に有名ですが、猫という生き物はしばしば作家を虜にし、仕込むものです。もし貴方の身の周りに「私は猫を飼っている」とか「私は猫を愛している」などと言って憚らない人間が居たら、まず目の色を疑うべきである。思うにそれらは猫に飼われたり、猫に愛されている人間なのであって、主客は転倒しているからだ。

まあ、そういう作品が一杯載ってます。オールタイムのベテランから近年の書き手まで様々、既存のアンソロジーや短編集には未収録なものも多く、個人的な既読作品はひとつだけでした。

自分はひとから犬派か猫派とか聞かれたら迷わず恐竜派だと答える程度にはひねくれているので、猫派なひとや犬派な方が読んだらまた違った感想を抱くのだろうとは思いますが、ジェイムズ・H・シュミッツ*2の「チックタックとわたし」、ジェイムズ・ホワイトの「共謀者たち」の2本が良かったですね。猫という生き物の神秘性をあらわすかのように決して綺麗なだけでは無い話も多くて、ジェフリー・D・コイストラ「パフ」のホラーっぽいラストやデニス・ダンヴァーズ「ベンジャミンの治癒」のほろ苦さというのもまた良きかな。それとジョディ・リン・ナイ「宇宙に猫パンチ」(正直この邦題はどうかと思うが)が、イマドキ珍しい牧歌的というか古典的な宇宙SFで、まだアメリカのSF界にこんな作品書く人がいるんだなってのが割とオドロキでした。イマドキ言うても1992年の作品だから30年前なんだけどさw

*1:https://www.amazon.co.jp/dp/B00H6XBIWS/

*2:カバー画で変に有名な「惑星カレスの魔女」の著者

A・ブラックウッド他「幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成」

 

翻訳者を基軸に組んだアンソロジーというのは最近SFではいくつかあったけれど*1怪奇小説では初めてかも知れません。この分野の大御所が特に好んで訳した選りすぐりの逸品を集めたもの。ラヴクラフトの「アウトサイダー」をはじめ古典の名作が多く、既読の物もいくつもありましたが、あらためて知る良さというのもまた多い。中には冗長だと感じる物や、若干引く言い回しもある*2のですが、そこも含めて時代というものを感じますね。そんな中でもベリスフォードの「のど斬り農場」の鮮烈さというのは、時代を超えていまでも十分受け入れられるものだろうと考える。平井呈一は本作をして

わたくしの言う純粋ホラーの部類にはいる作品で、恐怖の点では数段まさった無気味な味があり、恐怖党を満足させることうけあいの作品です

と評しているのだけれど、思うにこれコメディっぽいところがあるから、それが時代を超えられるパワーになってるんじゃないでしょうか。高橋葉介の「夢幻紳士」でもパロディというかオマージュがありました。

未読の中ではオスカー・ワイルドの「カンタヴィルの幽霊」がやはりコメディ色のある幽霊譚で、古き良き伝統的なイギリスの古城に住み着く幽霊が新参者のアメリカ公使一家を散々に脅かそうとして却ってやりこめられ、なんだかんだでめでたしめでたし。で終わるという、実に良く出来た19世紀エンターテインメントでありました。幽霊譚、そう幽霊なんですね基本はね。怪奇小説にもいろいろなスタイルがあるけれど、平井翁が愛したのは夜の帳を密やかに訪れる冷たく静けき震えであって、日常の狂人や昼日中の絶叫ではなかった。彼の人がもしもスティーブン・キング以降の「モダンホラー*3や今に至るゾンビブームを見たらなんて言うのだろうなあ…

 

またかなりのボリュームを割いて「付録」が掲載され、1960-70年代に発表された対談や書評、翻訳エッセーなどが紹介されています。こういうものはなかなか目にする機会が少ないもので、大変貴重な資料。「現代の創作家の文章は皆んなまずい」「それはタイプライターを打ってる文章」みたいな発言*4をみるとほっこりするけれど、「文士」と呼ばれた人々の最後の世代のひとりが怪奇小説の翻訳という一事に人生の万感を打ち込んで手掛けていた時代の、実に生々しい証言でもある。21世紀の現代とは状況が違いすぎるのでどちらがどうとは言えないのですが(翻訳権ってどうなってたんだろう?著作権法の戦時加算とかあったんだよな確か)。

 

巻末には紀田順一郎が解説の一文を寄せて、平井呈一の略歴(永井荷風の弟子で且つ破門され文壇を追われたってロックだ)や、実際に出会った印象・交流などが綴られています。こちらも大変興味深いものです。紀田順一郎も大伴昌司もこのひとの前では若輩で、荒俣宏にいたっては更に下の世代だ。そういう幻想文学界隈の積み重なり、「怪奇小説山脈」というものを感じさせる一冊でした。

 

ところで付録の中にオーガスト・ダーレスの詩*5がひとつ収録されているのだけれど、これがまた「アウトサイダー」そのまんまで、ダーレス嗚呼ダーレスという感じではある。

 

 

*1:http://abogard.hatenadiary.jp/entry/2018/11/11/152636 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20120430/p1

*2:表題作「幽霊島」で、アメリカのインディアンはともかく「土人」とあったのは流石に

*3:この人にかかってはブラッドベリウェイクフィールドあたりがモダン派なんである

*4:生田耕作との対談より。引用は正確ではない

*5:翻訳は「オーガストダレット」名義

劇場版「メイドインアビス」―深き魂の黎明― 見てきました。

公式。 世間では1周まわって4DX上映とか始まってるらしいけど、サービスデイに地元の小さな映画館で見てきました。新型コロナウイルス自粛ムードの中、そこそこの混みようではあった。

原作は未読、TVシリーズは昨年の再放送でようやく視聴、映画はどうするか迷っていたので総集編は見てないのよね。とはいえ第二期スタート前に見ておかないと話が通じなくなりそうな気もしたので、まあいいかなと。

いまさらネタバレも何もないだろうけどまあお葬式でした。プルシュカちゃんカワイイ。角川の水瀬いのり推しも長いなぁ…とか邪まなことを考えるおじさんである。

 

おじさん。

 

歳のせいかな、最近少年少女主人公なお話を見ると人の子の親でもないのに「親目線」になってしまって、今回もやっぱり感情移入と共感の先はボンドルドである。

 

おやおや

 

おやおやおやおやおやおやおやおやおやおや親親

 

などと(´・ω・`)

 

まーなんつーか「あらかじめ用意された悲劇」みたいなところはあるので、悲しいことは悲しいのだが予定調和だなあという気がしなくもない…

山田正紀「戦争獣戦争」

戦争獣戦争 (創元日本SF叢書)

戦争獣戦争 (創元日本SF叢書)

 

日本SF界の大御所を久しぶりに読んだ一冊。なんだけど、なんだけどな…

 

1994年、北朝鮮寧辺の核燃料保有施設を訪れた、国際原子力機関の核特別査察官である蒔野亮子は、使用済み核燃料の沈むプールの中で謎めいた生物が泳ぐ様を目撃する――それは戦争によって文明という負のエントロピーを正のエントロピーに“精算"する際に誕生する四次元生命体〈戦争獣〉。生態系ならぬ死態系に潜む死命(シノチ)の最優勢種である彼等は、永遠の闘争を生きる種族「異人(ホカヒビト)」のみが扱える。奔放な想像力が生み出す本格SFの新たな傑作!

 

amazonのストーリー紹介にはこうあるけれど、これではなんだかさっぱりワカラン。人類と戦争という壮大なテーマを独特な視点で描くという点で力作ではあるし、カバーにある

 

デビュー時の言葉「想像できないことを想像する」を体現せしめた書き下ろしSF巨編!

 

という惹句もそれは確かにその通りで、よくこんな話を思いつくなあというのは単純に感心するところではある。しかしなんていうかな、いかにも日本SFだなというか「戦後日本SF」だなというか、テーマの割に描写されるモノゴトやヒトビトが矮小というか…ねえ?朝鮮戦争の漢江鉄橋爆破とかベトナム戦争のソンミ村虐殺とか、わかりやすいアイコンに断片的にフォーカスして、且つお話の起点は1945年の8月6日と9日だというのは実に日本的だなァ…とか、思わざるを得ないところで。結局ポエミーな割に観念のパースペクティブ(ってなんだよ)にもあまり解放感というか発展性というか、そういう視点は感じられないしなううううううむ。

 

黄帝・蚩尤・女渦と言った中国の神話伝説に登場する「名前」をもつ存在がいろいろ出てくるけれど、これ中国の人が見たら怒るんじゃなかろうか(´・ω・`)そういう危惧も、無きにしも非ず。

要は「団塊世代の戦争観ってこうなんだろうな」というのを如実に示された気がする訳で。

ああ、機神兵団読み直したいなあ。中公のC★NOVELS版でねー

 

しかし「ムカデに似た節足構造」をもつ存在ならそれは戦争「獣」ではなくて蟲では無いだろうか???

 

初野晴「ひとり吹奏楽部」

ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 (角川文庫)

ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 (角川文庫)

  • 作者:初野 晴
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 文庫
 

 なかなか続巻でないなーと思っていたら、実は3年前に文庫オリジナルで出ていたハルチカシリーズ番外編。知らないうちにアニメになってたり知らないうちに映画になってたりと、どうもこのシリーズにはアンテナの感度が低くて困るよなー。しかし一度この形態になるともうハードカバーで新刊出すことは無いのかな?

内容についてはミステリ要素低めの青春小説風味、番外編ということでサブキャラにスポットをあてた、これまでとは若干風合いの異なるものです。一番の違いはこれまでとは違って過去の回想ではないということか。第一巻「退出ゲーム」の時*1には1980年代の雰囲気というのが確かにあったように記憶していますが(あくまで雰囲気で、具体的な記述では無かったと思うが)、まあ普通に現代物でそれはむしろシリーズ長期化にとってはいいことなんじゃないだろうか。

とはいえ、このシリーズ今後もちゃんと続くのか、謎ばかり提示されてさっぱり正体の掴めない草壁先生の真実は明かされるのか、そこはちょっと心配なんであります…

川村拓「事情を知らない転校生がグイグイくる。」⑤

 ああっッ…ああああッツ!!

などとうっかり変な声が出そうになったクリスマスデート回を含む第5巻。危うく一線を越えるところだった二人のロマンスの行く末はどっちだ。

今回は日野くん主役エピソードも有りです。日野くん最高にかっこいいです。

あと今回初めて本作で18禁同人やってるひとの気持ちが!わかりました!!(サイテーだお前は