ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

九頭見 灯火編「東京銀経社アンソロジー 真子と鏡」

東京銀経社アンソロジー、第二弾。ただいまBOOTHで好評販売中です。他にもネット書店「虚実書店マボロシ」様でも取り扱いあるほか、イベント等でも販売があるようです。

tginkei.booth.pm

books-maboroshi.stores.jp

 

第1弾となった「いつかあの空を越えて」の感想はこちらに。

abogard.hatenadiary.jp

以下収録作品感想を、順を追って。

 

蒼桐大紀「世界のすべてとわたしのありか」

こちらは原型となる作品を、ウェブで読んでいました。そちらは1万字の上限があるコンテストに応募した作品だったのですが、比較してやはりテーマ性は掘り下げられ、メカアクション・戦闘シーンにもボリュームが割かれて読み応えのある内容となっています。シリンダーベイビーとして産み落とされ、未熟な兵士としてポストアポカリプスな地球環境に放り出されたヒロインがアイデンティティを発見する。そのとき重要なのが「名前」であると、そこが非常に丁寧に書き込まれています。

また、「図書館」をテーマにした作品を最初に据えることで、ここからはじまるアンソロジーの内容を期待させるつくりにもなっている。そして、ウェブ版と収録版との最大の違いは――

その間に自分が「アポカリプスホテル」を履修したことにあります(え

 

Yohクモハ「植叢(うえる)ビーイング」

人体に植物を、エステ感覚で植え付けることのできる未来社会。植物と共存するようになった人類とその文明に起きる様々な変化。生き方も死に方も愛し方も変化し続ける社会で、それでも変わらないものを選ぶことは出来るし、変わることを選択してもいい。何を選ぶにしろ、目指すものはひとつ。そういう話なのでしょう。

To be or not to be, this is not question. This is BEING, well being.

なるほどこれは根幹が太い話で、アニマ・ソラリス賞を取ったというのもわかります。

 

秋待諷月「生き急ぎの幽霊」

ある種のタイムマシンを利用した「時間泥棒」作品ということで、ミヒャエル・エンデの「モモ」をエピグラフに取り、キャラネームにもオマージュが伺えます。恥ずかしながら自分はエンデ未履修なもので、ある別の有名作品を思い浮かべました(それがなにかは詳らかにしません)。未来へ(だけ)物や人を投射する片道タイムマシン「クロノマシン」が生まれたときに、それを利用した社会がどう変貌するかというディストピア風SFではあるのだけれど、そこで展開する物語が悪党に囚われた兄を救うために奮闘する妹、という善性なものなので爽やかな読後感を得られます。架空のテクノロジーを打倒するのがスマホ動画配信という「いまの我々の」テクノロジーだ。というのも共感するところか。

 

七名菜々「スティール・ストーク・ストローラー」

凄腕ながらどこか暢気な殺し屋に、突如降ってわいた新婚生活デキちゃった婚。可愛い新妻とお腹の中の赤ん坊(予定)のために一念発起、殺し屋からは脚を洗って運び屋に転職!したはいいけど新婚旅行も兼ねた最初の運び屋仕事になぜか襲撃が相次ぎ……

わりとパタパタ人が死にますが、主人公のキャラがトボけた感じなんで案外爽やかに話が進んで行きます。むしろ謎めいているのは妻の方で、その秘密が明かされるところはなんか同情を憶える。あとそのなんだ、このラストはもしかしてそのマンダ(銃声

 

九住龍「忘れえぬ夏」

「ペンギンSFアンソロジー」に収録された掌編「海が消えた日」を拡張したもの、と捉えていいのだろうか。フーとわたしの他にもう一人、登場するのは「あなた(you)」である。二人称で語りかける存在は何者なのか?推測は出来るけれど断定はしない。

折り紙のように折り畳まれた世界では、一枚の紙片に裏と表があるように、おたがい手を伸ばしても届かない。しかし世界の果ては「折られている」ので、そこから反対側に回り込むことは可能なのだろう。寂しいということに、裏も表も無いのだけれど。

 

洛杜きんるい「フェリスの星」

大方の人は勘違いしているけれど、星とは丸い物であり五榜や六榜に尖がってはいない。だから星の光を遮ろうと思ったら、何か丸いものを貼っ付ければいい。ほら、ここにフーセンガムがある。それは丸くて、色が付いていて、まるで星のようだ。

偽物の星空が飾る閑古鳥鳴く喫茶店に現れた本物の「何か」とはなんなのだろう?虎?猫座の化身?それともなにかべつのもの。差し詰めそれは肯定感というもので、世界のどの皇帝陛下よりも、人を高みに誘うもの。あっコーヒーお願いします。

 

蒼井どんぐり「雪宙花火」

これはだいぶ響きました。抑制された筆致で独特の世界観を抽出しながら、閉塞的な状況を打破する熱い物語が生まれている。且つ「ロケット」の描写がいまのSFになってるところも良し。やられたなあって思いました。長くは語らなくとも、それで十分でしょう。

 

渋皮ヨロイ「最低魔女とマシマシメンメン」

これはなんか、だいぶ変わったというか捉えどころの難しい話だ。姉は魔女だ。それはわかる。学校は予期せぬ暴力性にあふれている、そういうものだ。世界はなんか変だ。いつもそうだ。でその、えっ?つまりどういうことなの??

 

嶌田あき「プラネタリウムみたい」

切ない。過去から届く星の光と、過去から届く物語の言葉。星が人を導くように、言葉が人を導いて、先を照らす。今はまだ届かなくても、先々に待ち受ける高みを感じさせる。作り物が美しいのは、それは人のために人が作った物だからであって、気まぐれな自然の美とは少し違う。ひとを、讃える。そういうもの。

 

八月休希「タイタンにあがる月」

航空宇宙軍史シリーズのようなハードで読み応えのある宇宙SFであると同時に、航空宇宙軍史シリーズには無かった魅力的な女性キャラクターを存分に味わえる一本。宇宙船の推進システムや軌道遷移の解説が、難病の少女への「解説」になっている自然さは巧い。冒頭から驚かされる「呪文の詠唱」の仕掛けはラストシーンで驚かされる。読了した多くの人はティジリの魅力に打たれるだろうけれど、ミリー女史のメガネがふわっと浮き上がるところがとんでもなくステキ。

 

萬朶維基「万事調和(クッル・シャイイン・フィー・インシジャーム)」

日本に暮らすイスラム家庭で撮影された除霊儀式の映像、という体から始まる、だいぶヘビィな話。現実に存在する異民族・異文化を正面から書くというのも重いことだけれど、歴史家の視点がそれを支えるのでしょう。そして伊藤計劃トリビュート。そこもまた、真正面から書く。『虐殺器官』をリスペクトするハーモニーは、やっぱりちょっと綺麗だ。

 

柏沢蒼海「ダイハードマン・コントラクト」

全編が濃厚なアクションシーンの連続。SWAT部隊が保護した謎の少女を巡る……謎は謎のまま事態は次々に悪化し死体の数は増える。ゾンビと戦い軍と戦い仲間をすべて失った主人公が最後に手に入れたものは……。なんていうか、疾走感です。

 

阿下潮「プラセンタ」

胎盤食、というだいぶ不自然な(人としては不自然な)行為が主題で、記述の構成などいろいろと不自然な点が散見されるんだけど、ラストのひと言で全部収束するのは巧いし怖い。つまりその、不自然なのである。誰が?と言ったらネタバレになりますからそれは書かない。

 

六塔掌月「真子と鏡」

完敗だ。

恥ずかしながらこの東京銀経社アンソロジー、第二回公募には実は自分も投稿していて、そして落選しています。今回実際に読むにあたっては「オレサマの作品よりもツマランものがあったらユルサンぞ」ぐらいの気持ちでページをめくり始めたんですがアッハイ……みんなオモシロイですねこりゃチカタナイですね……ウワァーッ!グヌゥ……。となり表題作の本作で完全に打ちのめされました。女性が何かを喪失し再起に至るまでの回復過程で怪異と対峙する幻想的な逸品。落選となった自作と(だいぶ)被るところがある上に圧倒的にこちらの方が美しく、丁寧に描かれてる。

参りました。投了です。

 

ちなみに落ちたヤツこれ。「たいして被ってないジャン」と言われたらハイそれま~で~よっ(ギャグが古い

 

https://kakuyomu.jp/works/2912051596781763480/episodes/2912051596782727199

kakuyomu.jp

モリナガ・ヨウ「迷宮歴史倶楽部 第2集」

第1集刊行より10年を経ての第2集。連載元は変わらず「歴史群像」だけど単行本は大日本絵画から出るようになりました。歴群もいまは版元名に「学研」って入らなくなったのね……

「昭和の軍用メカ&施設探訪記」と副題にあるけれど、前回が比較的「生活」セレクトだったのに対して今回は軍事というか「公的」寄せなのかな。太平洋戦争に関する記事が主だけれど。ドイツの戦間期訓練用ハリボテ戦車、日本の戦後映画撮影用プロップ戦車(それぞれ「馬鹿が戦車(タンク)でやって来る」「戦国自衛隊」に登場したもの)などそこから外れるものも多い。なにせカバー画でセンターに座しているのは陸上自衛隊の75式ドーザーだ。いつものタッチの柔らかくもマニアックな画と読み易くもどこかドライな文体とで興味深いものがいろいろと解説されます。

「調音壕」の存在はこの連載で初めて知りました。こういうものはまず類書が取り上げませんからね。「軍事のブラタモリ」よろしくいろいろな場所に取材にも行っていて、ICU本館はさすがに部外者は簡単に入れないだろうけど「富士山レーダードーム館」はいずれ行ってみたいなあと思いました。

第3集が出るのはいつになるんだろうか?大型連載企画「奉安殿」は果たして単行本化されるのか……いや、是非してくださいあんな貴重な記録は無いよ。

 

「マスターズ・オブ・ユニバース」見てきました。

公式。原作はマテルのアクションフィギュアシリーズで、1980年代にタカラが輸入した際にコミックボンボンで広告記事を読んだ記憶があります。その時はなんとなく(幼稚だなあ……)とか思う嫌なガキwで、特にそれほど興味はなかった。ドルフ・ラングレン主演の実写映画はホビージャパン誌で紹介されたりテレ東の午後ローで、例の第二次安部政権成立時にやってたのをチラ見したぐらいで、やっぱりあんまり興味はなかった。カートゥーン版についてはまったく知らなかったので、今回の映画もやっぱり興味はなかったんだけど、花澤香菜がガタイのいい戦闘ロボをやるとか杉田智和がスケルターやるとか、日本語吹き替え版が妙に豪華なキャスティングなのに興味が湧き、公開直後にツイッタランドで極めてごく一部が絶賛していたので、見に行く。

 

やー、変な映画よ。でも自分のような漠然とした理解しかないものでも楽しめたから、詳しい人は大喜びなんだろうね。アメリカ版「シン・仮面ライダー」なんだというのはよくわかる。ゴジラでもウルトラマンでもない、もっとオタク気質に向けた作品だな。

「一万字の小説コンテスト用に書いた作品が気づいたら三万字になってたけどこのまま行ったれ!みたいな映画だなあ」というのが正直な感想なんだけど、削れば90分で収まりそうな話を削らずに140分にしたような感はある。とはいえその140分が決して冗長ではないし、退屈でもない。作りは丁寧だしキャラは経ってるし筋肉は大抵のことを解決する。

そう、筋肉よな。伝説の剣パワーソードが物語の鍵を握っているんだけれど、剣というのはあくまで鍵であって、”エターニアのチャンピオン”の本質は当人の資質に拠る。なので戦闘ではほとんど剣を使わず素手でブン殴ったり、ワルモノを武器の代わりに振り回したり、戦闘機を筋肉で撃墜したりする。エアバイクみたいな機体が出てくるんだけど、これ元ネタは玩具なんだろうなあ。乗ったはいいけど全然活躍しないの(笑)

敵も味方も変なのばっかなんだけど、むしろ味方に変なのが多くて、脚がスプリングになっててすげー頭突きをカマす「ラムマン(破城つち男)」とか首がびろーんとのびて自分の顔で敵を殴る「メカ・ネック(潜望鏡男)」とかまあヘンである。最終決戦もリミッター解除したアダム王子がステゴロでスケルターをスカボコにして終わる。この映画たぶん半年後ぐらいに邦キチがネタにすると思う。

剣と魔法と科学が融合した異世界、魅力は再評価されようとは思うけれど、いかんせんマイナー志向よなこれ(´・ω・`) 続編の匂わせもあるんだけど、どうなるかなあ。

カメオ出演しているドルフ・ラングレンがやたらかっけえ。大塚明夫の声でしゃべるぞ!

 

書き忘れていたけど音楽は非常に良い。メタルの曲調ならどんな画面でも3倍格好良くなると思う。

ロブ・ハート&アレックス・セグラ「暗黒空間」

うーん、ちょっと微妙。不満に感じたことは色々あるんだけれど、巻末解説にだいたい書いてあったんで、それ読んだらわざわざ自分で書かなくてもいいや。という気分に(´・ω・`)

で、宇宙船モザイクの主人公カレリスと月面都市ニュー・ディスティニーの主人公ティモニーそれぞれに「友人」ポジションのキャラがいて、イザという時に頼りになる!と見せかけてどっちもガッカリな結末になるという流れが、なんかねえ。

 

「機動警察パトレイバーEZY File1」見てきました

公式はここ。 1話先行上映の感想はここ。今回は1~3話までの構成。OPは映像まであるけど冒頭の1度だけ流れ、各話アイキャッチはなくエンディングは黒背景にエンドロールが流れる。

 

さて、どうしよう。

 

「パトレイバーってこんな感じだよなー」という感情と「まーたこんな話やるのかー」という感情が交互に出てきてその、困る。今後も見続けるとは思うけれど、人には勧めない。あたりかな。ロボはよく動くんだけど、基本的に毎回「警察のロボが出動して解決する事件」を考えるのって限界があるんだろうなあとか、そんなことを思った。「機龍警察」シリーズも話が進むにつれて龍騎兵はあんま話に絡んで来なくなってくるしね。ゆうきまさみのコミック版がシャフト企画7課と内海課長という「シリーズ全体の敵」を配したうえで「個々のキャラの掘り下げに向かう」作風だったのは、ありゃやっぱり良かった。

3話まで見るとなるほど「十和のキャラは別に太田を意識してはいない」というのはわかりました。上坂すみれのああいうキャラは好きなので、それは継続する理由になるかな。

今回進士と太田が出てきたけど、あれサービスのつもりなんだろうか?そこは気になる……「ひろみ農園」はともかく野明と遊馬は出て来ないでくれというのが正直なところで。

オッサン率高い劇場でも、上映直後に若いご両親に連れられた小さなお子様が「おもしろかったー」って言ってるのを見て、そこは救われた気がする。

 

だって3話ラストのアレはさあ、ただただ趣味が悪かったと思うよ(´・ω・`)?

 

梶尾真治「キノコがわたしを呼んでいる」

恥ずかしながら梶尾真治先生がこれほどまでにキノコを愛好される方とは存じ上げなかった。日本SF界ナンバーワンキノコ作家と言えば池澤春菜と信じていたけれど、ここは頂上決戦してほしい( ˘ω˘ )

地方新聞やミニコミサイトに連載していたエッセイをまとめたもの。1つの記事に1種類のキノコをテーマとして、それぞれ数ページの読み易いものです。それぞれのキノコが食べられるかどうか、というのはだいぶ重要な観点なんだけど、連載時より20年以上が経過しているので「現在では毒性が認められ食用に適しません」なキノコが結構ある。山で出会った親切な老人に勧められたたいへん美味しいキノコや、ふだん決して口にしない母親がようやく食べたキノコが「実は毒があります」みたいな注意書きで終わっているのは、なんだか変な笑いが漏れます(´・ω・`)

また、キノコを採取することにも相当な情熱が傾けられているのだけれど、土地の権利問題とか実際には色々ありましょうから、素人が迂闊に真似するものでもないだろうな。とは思います。