ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

伊藤計劃+円城塔+小川一水・他「THE FUTURE IS JAPANESE」

THE FUTURE IS JAPANESE (Jコレクション)

THE FUTURE IS JAPANESE (Jコレクション)

日米作家による「日本」をテーマにしたオリジナルSFアンソロジー。基本は書き下ろしなんだけれど伊藤計劃の「The Indifference Engine」が入っていたので「虚構機関」*1と読みくらべたくなって手に取る。同じ作品でも異なるアンソロジーに収録されることで違った読後感を得ることもありますからして。

もともとアメリカ向けの出版として企画されいわば逆輸入されたような本。まえがきにはアメリカサイドの編集者による日本SF観が端的に記述されててまあよくある「これまでの欧米からの日本SF観はどっか歪んでて実際はもっと別で云々」的な事が書いてあるんだけれど、実際どうなんでしょ?本書カバーのデザインなんかは相当歪んだ日本観そのものじゃねーかと思わなくもないんだが(このカバーが原書と同様か、敢えての日本版オリジナルかは不明。実は後者なんではないかと危惧する*2

まーなんでしょうね日米作家作品集にも係わらず著作者表記が日本人の3人だけ(日本人作家の全員ではない)、編者の名前も掲げられて無いってだけでハヤカワの営業方針が見え隠れしそうな気もするけれど、それ以上に日米作家間で作品の質的格差がありすぎなように思います。巻末の著者来歴一覧を見るとそれなりの書き手っぽいんだけれど日本で知られてるのはブルース・スターリングぐらいか。あとはほぼ無名の人たちで正直そんなに面白く、ない。巨大メカと少年少女とどっか煮え切らないアポカリプス的戦争を描いた「地帯兵器コロンビーン」作者ディヴィット・モールズの来歴が「二十世紀末ごろ、東京近辺で約六年を過ごした。現在はサンフランシスコ在住」ってだけなんだがそれってただのひとでは?などと思わせるような玉石混交間が半端ない…

しかし、玉のほうは玉である。円城塔の「内在天文学」はこれが本当に円城塔なのか!と思わせるほど平易でおまけにティーンズのラヴストーリーだ信じられん。それでいて中身はちゃんと円城塔らしい思弁的SFで翻訳されることを前提に書かれたんでしょうねえこれ。小川一水「ゴールデンブレッド」はちょっと「翠星のガルガンティア」をほうふつとさせる*3一兵士の遭難と異文化接触によるカルチャーギャップもので、欧米的肉食文明と古来の日本的な稲作文明との接触を、いささかアイロニカルな設定を使って演繹的に(且つ本質的に)「日本のアイデンティティは食べ物にある」を、やはりこれアメリカの読者が楽しめるようにわかりやすく書いたんだろうなーと思わされる丁寧にまとまった作品です。本書収録作ではこれがピカイチ。

対するアメリカ作家はうーん、どうもまえがきで語られてるようないささかステレオタイプや偏見を脱却し切れてないんじゃないかというエキゾチズム第一な話が多いように感じます。これは「日本人が書いたアメリカ小説」にもたぶん同じような――日本人読者が読んでるだけなら気がつかないような――ステレオタイプや偏見があるんだろうなと思うのだけれど。

そのなかでは青木が原の樹海と自殺者・同性愛をテーマにしたレイチェル・スワースキー「樹海」、世代間宇宙船の事故と自己犠牲を題材にしたケン・リュウもののあはれ」の二作品が良かった。どっちもタナトスがらみなのは読んだ人間の趣味だろうな(w


で、肝心の伊藤計劃The Indifference Engine」ですが、これだけは英訳版がそのまま掲載されていました。


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>  読めない /(^o^)\ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20130717

*2:危惧した通りだった。しかしオリジナルはわけがわからん…

*3:と言ってもガルガンティアは1話しか見てないのでよく知らない