- 作者: アガサクリスティ,蕗沢忠枝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/12
- メディア: 文庫
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個人的クリスティベストを、もう何度目になるかわからないほどに再読。自分が持ってるのは上品なイラストが表紙の新潮文庫版だけど、現在ではハヤカワクリスティー文庫の「七つの時計」asin:4151300740が入手し易いと思われる。が、自分の脳内では創元推理文庫版「七つのダイヤル」asin:4488105203のタイトルで刷り込まれているのであった。何故かといえば初めてこの作品に接したのが小説ではなくNHKで放送された海外ドラマによるもので、その時の記憶が印象に刻まれてる模様。三つ子の魂なんとやらですね(笑)
「チムニーズ館の秘密」や「ゼロ時間へ」と一部登場人物が共通するけど、ノン・シリーズで独立した冒険サスペンスと考えて良いと思う。原著は1929年刊、クリスティ39歳のまだ瑞々しい作風の活劇調で、有体に云ってライトノベル風味でもある。ユーモラスな出だしが一転して殺人事件となり、渦中に置かれた素人だが勇敢なアマチュア探偵家と暗躍する秘密結社セブン・ダイヤルズの謎…。
叙述トリックを用いた作品なのであまり詳しくは書けないけれど、それまで目にしていたキャラの心理描写や行動行為がラストでがらりと一転するのは何度読んでも楽しい、よい意味で驚かされる。読者に全ての情報が明かされている訳ではないのでいわゆるフェアな「本格推理物」とは目されないんですが、それでも多くの読者に好かれる名作と言えるでしょう。
だってバンドルが可愛いんだもの。
1920年代の当世風な気質で独立独歩、好奇心旺盛でどんな危地にも平気で飛び込み、猛然と愛車イスパノを駆るスピードキングでもある。本物の貴族の生まれで使用人をアゴでこき使うところもたまらぬハァハァ。その点中産階級から身を起して出世したサー・オズワルド・クートの妻レディ・クートが庭師ひとりにまったく頭が上がらない様が対照的なんだけど、どちらの人物も嫌みなく愛すべき筆致で描かれるのはさすがのワザです。
こじんまりした秘密結社がメンバーを変な名前で呼び合うと言えばチェスタトン「木曜日だった男」asin:4334751571がありますが、関係性は如何に? そのセブン・ダイヤルズ小説内では時計の文字盤を描いた一枚布を覆面として垂らす(黒子衣装のようなイメージ?)でしたが、件のドラマでは全身黒づくめのKKKみたいな三角頭巾で偉くインパクトのあるコスチュームだったなーと、
ああ、ちょっと違った。流石に記憶はあやふやか(5:40あたり)。しかしこのバンドルは可愛くないなあ(w;