ファインモールド待望の新製品・完全新規金型の日本軍アイテム「三九式輜重車 甲」のキットレビューです。合わせて「野戦炊事セット 九七式沸水車」のキット内容も見て行こうと思います。(基本はツイッターに挙げたことの再編集です)
Aランナー、Bランナーです。キットはパーツ全体を小ぶりのランナー枠に分けた構成をとっています。これは三九式輜重車と九七式沸水車を同時開発して共通部分は同じランナーで対応するための配置と思われますが、こうしておけば後々に何らかのバリエーションが期待できるのかも知れません。
三九式輜重車にCランナーは未入で、こちらはDランナーになります。輓馬と輜重兵のパーツ内容。キット開発発表当時から話題の「馬の帽子」こと試製防暑帽(乙)のパーツもここに配置。
荷物関連RB1ランナーは木箱と木桶の木製品パーツ。2枚封入されています。
RB2ランナーも2枚入りですがこちらは金属製の小銃弾薬箱です。この部分を別枠にしているのは、九七式沸水車では不要となり、それを省くための処置と思われます。
デカールは2製品ともに共通です。糧秣を示す文字は、なかなかミリタリープラモデルには見られないものですね。
荷馬車のプラモデルというのもユニークなものですが(国内外メーカー見てくと色々あるんですが)、モールドの切れ味、表面の質感などはさすがのひとこと。
荷物を覆う雨被の、布の質感や「中身」を感じさせるシワの寄り方も見どころでしょう。キットは荷台に直接箱類を並べるか、こちらの雨覆いを載せるかの選択式となっています。
一週間遅れで発売された「野戦炊事セット 九七式沸水車」を、こちらは差分だけ見ていきます。
Aランナーは共通で沸水車部分のCランナーです。荷車のフレーム部分もこちらに配置されます。
炊事を行う兵士3体、および調理器具を含むEランナー。デカールは上記のように共通ですが、箱関係はRB1ランナーが1枚のみ付属します。メーカー公式の完成見本ではRB1ランナー2枚分を使用しているのですが、三九式輜重車を組むと1枚分は確実に余る(載せきらない)ので、両キットを買って潤沢に使うが吉かと。沸水車に輓馬を繋いで行軍などというのも良いでしょうね。
また、どちらのキットもそれぞれ3ページにわたって輜重兵と輜重車、給養器具などについての詳細な解説が記載されています。なかなか類書を見ない分野でありますから、これだけで十分、一級の資料と言える内容です。
三九式輜重車に戻って組み立てていきます。行程1番から馬を組んでいくのは上がりますね(笑)パーツはパチピタのひと言で、分割線も馬具などで見えなくなるよう工夫されています。唯一気になったのは頭部と首部分の合わせ目なのですが、
この通り、試製防暑帽(乙)をかぶせるとまったく気になりません。成程単に話題性だけで付属している訳ではないのですね、これには驚かされました。
三九式輜重車(甲)、支柱は駐車/運航状態の選択式です。キット付属の荷物ばかりではなく、他にいろいろなものを乗せられそうには思いますね。藤田昌雄「激戦場 皇軍うらばなし」 にはいろいろな搬送法が載ってた記憶が……
こちらの画像の状態はただ置いてみただけなんですが、輓馬と輜重車の接続精度もぴったり。4点支持なんですね。そして組立ていてふと疑問が。
それでふと疑問が湧いたのですが、日本陸軍の正式車輛には製造銘板や星章が付き物なんですが、この三九式輜重車にはそういうのはあったんでしょうか?そもそもどこで作ってたんだろう?まさか三菱重工や瓦斯電の戦車工場じゃあるまいし、木造・木工はもっと身近なところにあったのかもなーと。 pic.twitter.com/cvdFaj6I5N
— あぼがど (@abogard_ausfB) 2024年4月12日
そんなツイートに丁寧なお返事を頂きました。
小倉陸軍造兵廠や大阪陸軍造兵廠で生産の記録がありますね
— (有)ファインモールド製品情報 (@finemolds_news) 2024年4月12日
(小倉で1年で200両の生産目標といった具体的な数字も書いてあります)
ただ木製なので民間の町工場に部品を発注し、軍では最終組立をしていただけ、もしくは完成品を軍に納入させていたのでないかと考えています🤔
銘板は三六式二輪輜重車の書類で文字で「銘板は〜」と書かれた物は見かけた事があるんですが、三九式は制式図面にも部品図にも書かれておらず、現存車両にも付いていませんでした。
— (有)ファインモールド製品情報 (@finemolds_news) 2024年4月12日
民間の馬車には写真のようなNo.プレートが付いてたので、輜重車にも無いかと探したんですけど見つかりませんでした😅 pic.twitter.com/mvNfk16qON
なるほど、大変勉強になります。荷馬車というのも当時は戦車や戦闘機などよりはるかに身近な存在であったはずなのに、いまではあまり顧みられないものですね。そういうところにも目を向けるきっかけとなるプラモデルではある。
輜重兵フィギュアはちょっとうつむき加減なところがグッときますねー。路面を注視しているポーズな訳ですが、なにか寂寥感というか。物寂しさがあります。ところでファインモールドのフィギュアには銃を構える状態の物が全然ない(大昔のメタルモデルぐらいまで遡らないとない)のは、あれはなにか理由があるんだろうか?
雑嚢部分には水筒をジャストフィットさせるモールドが施されています、また帽垂パーツの分割・固定方もこれまでに見ない処置です。
塗装と仕上げに関してはちょっと変化球で、まずコルクシートと粘土で作った簡単なベースに輓馬・輜重車・フィギュアを固定。クレオスの黒サーフェーサー(1500)を吹きます。こうしてみると馬の臀部はいいかたちをしているなあ。
そしてブロンズ像風に、緑青仕上げにします。使用したのはグリーンスタッフワールドのリキッドピグメント ベルティグリ(緑青)で、いい感じにツヤの消えた緑青になってくれます。これをやるんで黒サフ必至なわけですね。
台座は百均の木箱にアサヒペンのストーン調スプレーを吹き、タイトルプレートは「互換屋」さんの銘板彫刻サービスを使って「輜重人馬之碑」としました。
ご興味ある方はこちらをご参照ください。アドビソフトお持ちならかなりいろいろ出来そうです。
コンセプトとしては「遊就館の片隅にひっそり置かれてそうなブロンズ像」を目指しました。やりたいことは大体できたかなーと思いますが、
考えてみると「碑」ではなかった(´・ω・`)
ま、まあいいじゃないですか。勇ましさでも悲壮感でもない、戦争の切なさや侘しさを感じられる、これは良い模型だと思うのです。