- 作者: アーシュラ・K・ル・グィン,Ursula K. Le Guin,佐藤高子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1986/07/01
- メディア: 文庫
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先日の訃報をうけて、あらためて代表作を読んでみる。10代の頃一度読んでいて、実はそのときまったく歯が立たなかった。一応読み終えはしたけれど、なにがなんだか全然判らなかったのだ。あれからずいぶん経っての再読で、本書の内容を能く理解出来たとはやはり思えないのだけれど、たぶんこれは自由と平等、公平についての物語なのだろう。主人公シェヴェックの惑星ウラスに於ける「現在」と惑星アナレスでの「過去」が章ごとに交互に綴られていく構成は、物理学者シェヴェックの唱える宇宙理論<同時性理論>を体現していて…と、それぐらいまでは解かる、ようにはなった。
ある種の共産主義的なユートピアとして入植されたアナレスの、しかし現実は理想的でもなんでもないところ。対して資本主義的(むしろ通俗的と言ったほうが良いのか)なウラスの、不自由で不公正な現実。そのどちらにも敗北あるいは「挫折」する物語のようでいて、実は理想は(極めてデウスエクスマキナ的な存在の援助によって)達成される結末…なのかな。
思うに自分が「共有」に拠って立っているアナレスの「オドー主義者」の社会を、そもそもあまり良いものと感じられないから齟齬が起きているのかも知れない。それは少し悲しい。
次に機会があれば短編集に手を出してみるかな。「オメラスから歩み去る人々」は好きなんです。