ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

大森望 日下三蔵 編「年刊日本SF傑作選 行き先は特異点」

 

 

もう10年になるのですか、長く続きますね。などと言いたいところだけれどこのシリーズ読み始めたのは刊行開始後数年してからのことなので、あまり偉そうなことは言えない(笑)。とはいえ10冊読んでるとさすがに大体の傾向は固まってくるものなのか、当初読んだころに得たような感覚はやっぱり薄まって「慣れ」て行くのかな、とも思う。もちろん今回初収録の作家作品もあるのだけれど、全体的な傾向として。

それで今回初収録の牧野修「電波の武者」が面白かったのは、自分がこのシリーズになにを求めているのかをちょっと考えさせられた訳です。牧野作品読むのも久しぶりで、はじめて「MOUSE」を読んだ時のような気持ちをなんとなく思い出したりなのだけれど。

谷甲州「スティクニー備蓄基地」はおなじみ航空宇宙軍史シリーズで、航空宇宙軍のフォボス基地が外惑星連合軍の「生物兵器」に襲撃されるエピソードなんだけれどこれがまたエラく地味だ。いつものことだ。〇〇を兵器化する話はセイバーヘイゲンのバーサーカーシリーズにもありましたが、まあ絵面は地味で、しかし何故だか本当に不思議なんだけれど横山えいじの絵柄で脳内再生されて困る。衛星内部の地下基地がアレに覆われるって一歩踏み間違えれば容易にシュールなギャグに出来そうです。ドローンはススムくんで。

 

この2本がこんな観点で良かったなどというのは自分もとんだ老害ですが、今回一番良かったのは第8回創元SF短編賞受賞作、久永実木彦「七十四秒の旋律と孤独」でした、kindleなら単著でも読めるのかな?

 

 

題材としては古典的と言うか「枯れた技術の蓄積」のようなところが堅実な宇宙SFなんでしょうね。宇宙船に〇〇と少女は必須!とか言ってみる(笑)

 

巻末の選評と2017年SF界の概況は読みごたえのあるもので、やっぱり一番大事なのはこの部分かも知れません。「自分の書いた小説が面白く読めないかも知れないという危機感の弱さ」(長谷敏司による)が、なんかいろいろ重いなあ。