お祖母さんが九百人いればSFなんだから、姉が十兆人もいたらそりゃハードなSFだろう。そんなことをふと思う。「妹はファンタジーだ」というのは90年代インターネットおじさんなら皆シスプリを越えて来ているだろうから今更ながらだけれど「姉はSF」なのかも知れぬ。「違う宇宙の果てで待っている妹」というのも実にSFではありますがしかし。
しかしいいね、実に読みやすいシンギュラリティSFでした。なんとなくこういうのは堅いんじゃないかなーと若干身構えていたのですが、表題作をはじめ中編三本、どれもみなリーダビリティが高くアクションも適時差し込み、そして主にディスカッションで話は転がっていく。いちばん最初の「ランドスケープと夏の定理」は冒頭部分をどこかで読んだ記憶があるんだけれど、どこでだったかな?第5回創元SF短編賞受賞作なんだけど「さよならの儀式」*1には掲載されて無いんだよね。「ミステリーズ!」は読んでないしなー。
ともあれ、一作目ではラグランジェポイント上のL2宇宙ステーションだけを舞台とし、「ベアトリスの傷つかない戦場」では北極圏カフェクルベン島、「楽園の速度」では月や日本(地球)とだんだんお話の舞台を広げながら、それぞれのストーリィで解明されていく「定理」がヒトをあるいは世界を一歩ずつ先へ先へと進めていくような、サイトスケープ*2な物語です。その視座の中には常に強引で傲慢で最短距離を驀進していくちょっと可愛い姉が
十兆人ほど。
SFは絵だねぇ…
最先端のスペキュレイティブ・フィクションのようでいて、ところどころ「フェッセンデンの宇宙」や「停滞空間」といった古典SFを思い起こさせる箇所もありでニヤニヤします。そういうところもよいです。
そしてなによりウアスラが、宇宙に遍く存在する双子の妹が、
なんかカミナギみたいで
それもまたよし(*´д`*)
そして『問いを解くことは善か悪か』という命題がなにか引っかかります。これは果たして主題かどうかは定かでは無いし、物語自体は問いを解くことでハッピーエンドを迎えるわけなのですが。
ですがしかし。
*1:http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20150117/p1
*2:そんな単語があるかどうかは知らん