創元の年刊日本SF傑作選も12冊目の本書でいったん休刊。2010年代と共に、また干支がひとまわりしたところで閉じるというのもまあそれらしいものかな。リアルタイムで同時に追ったわけではないけれど、このシリーズで出会ったりまた再会した作家も多く、日本SFの魅力を様々に受け取ったように思います。ありがとうございました。
今巻では古橋秀之「四つのリング」柴田勝家「検疫官」水見稜「アルモニカ」などがお気に入り。面白い所では宮内悠介の「クローム再襲撃」を以前読んでいる(「超動く家にて」収録*1)のだけれど、そのときよりも今回の方がより良い印象を受ける。短編小説を読むというのはそれをどのような環境で読むか、単独なのか作家の個人短編集なのか、本書のようなアンソロジーなのか、そういう違いがあるのだなとあらためて気づかされ、編者・編集者という存在に大きな敬意を払うところであります。
巻末には歴代各巻の収録作リストが挙げられていて、伴名錬の作品を結構読んでいたんだなあと、これもまた再確認。しかし毎年の「日本SF界概況」が読めなくなるのは惜しいですね。これで知る書名も多くてたいへん便利だったのですが。
年刊日本SF傑作選と言えば創元SF短編賞。幸いこちらは継続されるそうで、これからも素晴らしいSFとSF作家が世に出ることを願って止みません。
折角なのでこれまで読んできた「年刊日本SF傑作選」記事を挙げておきますね。まああまり深いことは書いていないのであるが。
・「年刊日本SF傑作選 虚構機関」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20130717/p1
・「年刊日本SF傑作選 超弦領域」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20131102/p2
・「年刊日本SF傑作選 量子回廊」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20131217/p1
・「年刊日本SF傑作選 結晶銀河」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20130311/p1
・「年刊日本SF傑作選 拡張幻想」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20130413/p1
・「年刊日本SF傑作選 極光星群」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20131201/p1
・「年刊日本SF傑作選 さよならの儀式」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20150117/p1
・「年刊日本SF傑作選 折り紙衛星の伝説」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20160529/p1
・「年刊日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/2017/06/01/210423
・「年刊日本SF傑作選 行き先は特異点」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/2018/02/17/102229
・「年刊日本SF傑作選 プロジェクト:シャーロック」 http://abogard.hatenadiary.jp/entry/2019/01/20/213244
あらためて見直すと、途中で四文字タイトルをやめちゃったのは実におさまりが悪いな(笑)