新潮文庫の南條竹則新訳によるクトゥルー神話傑作選第三巻。既存の2冊の感想はこちらに。
今回は表題作のほか「銀の鍵」などドリームランドもの、「恐ろしき老人」をはじめとする幽霊屋敷譚、そして「セレファイス」や「ヒュプノス」など散文詩的なものを収録。ちょうど本書を読んでいた時にツイッターで「本格ファンタジー論議」みたいなのがちょっと起きてて、大抵の人が挙げていたのがトールキンとその手法のようなものだったけど、例えばラヴクラフトのこれらの作品やダンセイニなどもまた「本格的な」ファンタジー小説ではなかろうか…などと思うところです。
とはいえこの辺の作品は結構その、本格的に眠くなるところもあってその、あんまり電車向きではないなあ(´・ω・`) クトゥルー神話傑作選と謳いながら神話要素は薄めでもある。しかしながら表題作「アウトサイダー」で語られる主題は、神話とか宇宙的恐怖とかよりも一層深いところのラブクラフトの作風に触れるように思う。たはりこれは重要な作品であり、ダーレスがアーカムハウスを興した時に「アウトサイダー」を掲げたのは、まったくもって正しかったのだなあと思わされることしきりです。例の二行詩とアブドゥル・アルハザードが初登場する「無名都市」も収録されていますし、新潮文庫のこのシリーズでラヴクラフトからクトゥルーに入門するのも悪くないかもだ。
カバーがね、いいのよ。このシリーズ。