- 作者: リン・カーター,朝松健,竹岡啓
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/01/27
- メディア: 単行本
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だから、この本に本当の終わりはない。クトゥルー神話大系という、とてつもなく魅力的で、この上なく特異な文学的現象の物語は、現在から未来へと広がっているのだ。「クトゥルーの呼び声」が書かれてから今年で四六年になるが、あのすばらしい作品によって始まった怪奇文学の不可思議なる一派はまだ生きており、まだ成長している。そして今日なお新世代の読者たちを楽しませ、新世代の作家たちを魅了している。彼らは私自身と同じく個人的にはラヴクラフトのことをまったく知らず、彼の存命中は小さな子供に過ぎなかったか、あるいは彼の没後まで生まれてもいなかった者すらいる。
最終章、末尾近くの一節より。その後文章はラヴクラフトの名声と影響はこれからも増大し終わりが無いと続き、そして事実、その通りになった。にゃる子さんとか不定形メイドとかに乾杯。
原著は1972年発行のクトゥルー神話研究書。ラヴクラフトってだいたいこんなひとで、クトゥルー神話ってだいたいこんなお話ですよというバックグランドを当時のアメリカ人に向けて説明した内容で、どこかで聞いたような話が綺麗に纏まっている。つまりこれが底本だったと、そういうことですかね。国書刊行会が最初に「真クリ」出した時に一緒に在ればよかったのになーと、思わなくもないです。本書の価値はラヴクラフトのひととなりだけでなく、オーガスト・ダーレスとアーカムハウス出版社について書かれた後半部分にこそあるんだろうとそんな風に思った訳で。
主題がビブログラフィーなところに置かれているからか、特に前半部分でリン・カーターは神話作品/非神話作品の類別を随分と熱心に行っている。「ラヴクラフト作品」のすべてがクトゥルフ神話作品ではないというのは自明としても、読んでる立場ではそこまで明確に線を引いてるわけではないので若干戸惑う事もあり…やっぱり自分がケイオシアム社のRPG以降の世代だからか、そもそも「翻訳」で読む日本人だからワンクッションは置かれているのか。
各章の章題が神話作品のパロディになってるのもこの本が初めてなのかな。現在では既にして古典的手法ですけれど、一番最初にやったなら楽しかったろうなー。
「楽しさ」って大事です。みんなが作ったそれぞれのお話に、共通する小道具やキャラクターを絡めようって遊びはいつの世も変わらず、楽しいことですね。
巻末には「クトゥルー神話固有名詞表記比較表」が載ってて日本語で読まざるを得ない日本人には便利で楽しい。こっちには一部日本人作家の創作からも範を取っているのに「クトゥルー神話作品目録」に日本作品がひとつも無いのは…
汝にチュールー神の呪いあれ!ってことだな(笑)